伸びに伸びていたイランの核開発問題に対する合意が、やっと成立することになりました。イランと米国の議会の承認が必要らしいのでまだ紆余曲折を経る可能性はあるのですが、戦争を望む勢力の動きを抑制することが出来た様子です。今年の暮れまでには大きな変化につながると思われます。
合意内容はまだ詳しくは分からないのですが、報道によれば以下となります。他にも詳細な項目が存在すると思います。
1)遠心分離器を3分の1に縮小、
2)ウラン濃縮度は15年間で3.67%以下に制限、
3)濃縮ウラン保有量は15年間で300キログラム以下に制限、
4)ウラニウム研究開発は15年間ナタンツ施設に限定、
5)兵器級プルトニウムの生産禁止
国際原子力機関(IAEA)は14日、イランの核開発疑惑の年内解明を目指すロードマップ(工程表)について同国と合意した。イランの核開発に関する「軍事的側面の可能性(PMD)」に関する最終報告の取りまとめが制裁解除の前提条件となる。
とのことです。12月15日が期限でこの最終報告書が提出される様です。
この先様々に意見が出されてくると思いますが、記事には以下も載せられていました。
オバマ米大統領は今回の合意を「さらなる希望に満ちた世界」への一歩と評価。「これで新たな方向に向かって歩むきっかけができた。われわれはこの機会を逃してはならない」と語った。
イランのロハニ大統領は「わが国に対する専制行為が終わり、世界との協力関係が始まった」と述べた。一方、イスラエルのネタニヤフ首相は今回の合意を「歴史的な過ち」だと批判した。
イスラエルは自国の不利が重なることしか目にない様子で、もちろん世界の目がイスラエルの核開発に向かうことを阻止する動きに躍起になるでしょう。彼らが核管理の体制の外に存在しており数百発の核を保有することは公然たる事実です。
自国の政治力がアメリカの政治力に大きく依存している状況だった以上、アメリカが核問題に民主的に向き合うのであれば、これからイスラエルには大きな圧力がかかるでしょう。変化を生まずに時が流れることはないと思います。
世界の石油価格はシェールバブルを萎ませるために現在50~60ドルに低落しており、もうしばらくこの価格が続くことになる雰囲気です。
ここにイランの石油が年明け以降に参入する公算が高くなりました。石油価格がさらに値崩れすることに可能性は残しますが、どちらかと言えば、高値に戻る可能性が損なわれてゆく事になると思います。
これまで人為的に高値を続けてシェールの開発が続くように仕向けていた部分が大きいと思われますが、単純にサウジとロシアが攻撃するから値段が下がるのではなく、本質的なところでシェールに将来性がないと考えているアメリカの勢力が存在しているのではないかと思えます。
シェールの油井の寿命が極端に短いことは何度か書いてきましたが、投資が続く間しか産油が機能しないのであれば、これは投資のリターンが本質的には、少なくとも長期的には期待出来ないと見ることになり、多くの人がこの現実に気づくときバブルは終わりを告げるのです。
石油資本の一部には、恐らくイランに入って石油を産出する部分で利益を求める動きが出てくるのかも知れません。ロシアはこの種の利益を確保するでしょうし、日本も昔は協力関係にありました。このあたりがどの様になるのかはこれからかも知れませんが、アメリカが戦争を望む人々とそうでない人々に割れており、イランとの協力を求める勢力ががんばれる状況が生まれたことが重要です。
ISISはまだしばらくがんばると思いますし、戦争を望む側は次の大統領選挙で共和党の戦争を望む人を勝たせたいのでしょう。そこまで状況をつなぐ事を考えていると思います。
イスラエルと軍産議会複合体と呼ばれる戦争を望む人々には、ISISを守ることが重要な課題になり、アメリカの内部における平和を望む人々との闘争が激しくなることになるようです。
この種の動きは経済にも連動しており、シェールのバブルを潰されると戦争を望む側には資金切れの苦しい展開が待つことになります。今はまだがんばれていますが、将来の展開次第でしょう。イランの石油供給の再開はバブルを潰す側の影響になると思います。
FRBも利上げを年内に行いたいとしており、加熱して見える経済を調整するために利上げを行う事を予定しています。こちらは経済のバブルに対する熱冷ましであり、結果としてはシェールバブルを潰すと言うよりは抑制する物になるでしょう。こうしないと米国の経済が持たないところまで実際には来ています。
残るニュースはロシアの経済制裁がどうなったかなのですが、ニュースとしては流れなくなるほどギリシャ問題に時間が割かれました。なし崩し的に制裁が終わってゆくのかと思っています。マレーシア航空の事故の報告もあって良いと思っています。
ギリシャの問題は本日の議会での関係法案の賛成にかかっているようです。うまくいかなくてもユーロからの一時離脱がドイツに提案されているくらいですから、ここまでを考えている人が多いと思っています。
イランの核合意は久しぶりに良いニュースを聞いたと思いました。この後足引く展開が待っていると思いますが、イランの石油輸出の再開までがんばってほしいと思います。
稲生雅之
イオン・アルゲイン