富士山の噴火と関連地震      2月11日

 富士山の直下にあると言われるマグマ溜まりは、イラストに見るようにフィリピン海プレートの裂け目の中に存在しています。
 裂け目の右側には関東平野があり、左側は静岡の東海地震のエリアになります。この裂け目の中にマグマ溜まりがあるので、地震によりこのプレートが動いてマグマ溜まりを北側に押し上げる時、マグマ溜まりは圧迫されて噴火を引き起こすことがある様です。

 マグマ溜まりには、太平洋プレートの上面からマグマが立ち上って来ます。このマグマは太平洋プレートの沈み込みに合わせて発生しますので、ほぼ一定の速度で生み出されていると考えて良いと思います。
 マグマがすぐに吹き出せる状態であるのか、それとも蓋が出来ていてすぐには出てこられない状態なのか、この点が噴火に大きく影響しているようです。

 マグマ溜まりに影響する地震の方ですが、今考えているプレート型の地震については、このプレートの沈み込みの量に比例して地震が起きやすくなる物です。
 沈み込みが一定の量に達すると、いつ地震が起きてもおかしくない状況となり、何らかのきっかけで地震の発生に至るようです。例えば東海地震の場合なら南海トラフの地震として次回まで88年程度と計算され、実際には平均118年にされています。(政府の公式データーより)

 富士山の実際の噴火は、プレート地震による圧迫の条件と、マグマの量、質と噴火を引き起こす火道の状態で決まるようです。
 864年の貞観大噴火の時には、マグマ溜まりも満タンに近い物であったと思いますが、800年に噴火が起きており、その後も噴煙を上げているという状況でした。噴火可能な火道が確保されていたためにマグマが出てきやすかった様子です。

 この時のマグマは地震に押し出されることなく2年間にわたってゆっくりと出てきました。出てきた量は1.4立方キロメートルで、この後起きる宝永噴火の約2倍です。
 これだけの量を押し出すにはマグマ溜まりでもある程度の発泡が起きて、このガスによりマグマが押し出されていると思います。明確なことが分からないので調べる必要のあることですが、時々起きる噴火とその噴煙によりこの種の発泡ガスの含有量がうまく調整されていたことになると思います。富士山のマグマの質は変化するのです。

 1707年の宝永噴火では、その前の噴火は1511年と少し間が空いています。加えて当時は噴煙も上がっていませんでした。そこに1703年の元禄関東地震、1707年の宝永地震と重なり、マグマ溜まりの両側のプレートに北へ押し上げられる形で圧力が上昇して噴火となっています。

 火道がふさがっていることに加えて、マグマ溜まりにも十分なマグマが存在していたのでしょう。圧力の上昇によりマグマが急上昇し、浅くなる分の地圧の低下により発泡して大量の火山灰を吹き出す噴火になったようです。炭酸飲料の発泡と同じで、気が抜ける前に圧力が下がり発泡に至るのです。

 富士山の噴火の本を読むと宝永噴火が前例として出されており、この噴火に応じた対策をすれば良いと考えている人の多いことが分かります。実際に科学としてみると同じレベルの噴火に収まるという保証は全くないのですが、噴火を過小評価しないと対策が大変であると言う事なのか、大きめの噴火を予測し備える話はほとんど聞かれないのです。

 宝永噴火後に蓄えられたマグマの量は約0.3立方キロメートル分ですので、これをアピールすることで大きな噴火にならない話に出来るのです。
 実際にはマグマ溜まりの構造どころか、次の噴火が溶岩型か、火山灰型かの予想さえ出来ない科学である以上、地震対策と同じくリスクサイドに立って検討すべきだと思います。

 実際のマグマ溜まりには常に新しいマグマが供給されており、ガス成分も加わり続けています。このガス成分を300年間ほとんど抜き去ることなく来ているというリスクが評価されないといけないのですが、今の科学ではまだ明確には答えられないのです。
 山頂地下15km位の所に低周波地震と呼ばれ、マグマに相関があると言われる地震が起きる場所があります。この領域をマグマ溜まりとして計算するとその大きさは簡単に100立方キロメートルを超える大きさになり、状況次第で0.3立方キロメートルを大きく越える火山灰放出を伴う噴火にも現実的可能性があるのです。

 低周波地震の起きる領域は、マグマと岩盤というか地殻が混在する場所で、地殻の破壊時にマグマが影響して高周波成分を取り去るために低周波地震になると想像しています。従いこの場所の大きさがそのままマグマの量になることはないと思いますが、含有量は10%でも10立方キロメートルですから、決してマグマは少なくないはずです。
 この領域にガス抜きされていないマグマが大量に存在する可能性があることには、きちんと向き合わないといけない現実だと思います。100立方キロメートル分が全て出てくるわけではないのですが、5立方キロメートルでも大きな被害につながるのです。

 一例として被災の想定に30cmの火山灰で家屋が倒壊するという物があります。イラストに見るように今の予想では静岡の一部と神奈川の広いエリアになりますが、予想が3倍狂うと東京にもそのエリアが広がります。多くの人が家を失うだけでなく、交通網、ライフラインも1ヶ月単位で影響を受けると思われ、無策でこの被害を受けると多くの人々が亡くなるだけでなく残された人々も火山灰に埋もれて大混乱になりかねないのです。
 被害想定をある程度大きな物まで含んで作成しないと、想定外の地震以上に大きな被害を生み出すことになるのです。311後の政策としてはいくら何でもお粗末でしょう。

 次の噴火は、貞観型のマグマの流出よりも、宝永型の大地震の影響による火山灰型の噴火になる可能性が高くなっています。火道がふさがれていることと、周辺地震の周期がこの同型噴火を促す状況になっているのです。
 マグマ溜まりの西側のプレートは東海地震のフィリピン海プレートです。この地震は1854年以来160年も起きておらず、118年くらいの平均周期も越えておりすぐにも起きておかしくない地震です。

 東海地震は東南海地震と同時に起きていますが、この連動にはどれほどの相関があるのか、科学はまだ正確には答えられません。東南海地震は1944年の発生ですので、周期としては2032年頃に起きてもおかしくない予想になります。
 実際には東海地震が東南海地震を誘発してもおかしくない歪みをため込んでいるので、この時期も早くなるのではないかと思います。

 マグマ溜まりの東側のフィリピン海プレートの起こす地震は小田原地震と呼ばれる物で、約70年周期で関東大震災クラスになる時もある物です。この地震も1993年頃以降いつ起きてもおかしくない状態であり、富士山の噴火を誘発しやすい状況なのです。
 そして現状311の発生により東日本が影響を受けて、フィリピン海プレートに歪みをもたらしています。この歪みは評価が難しいのですが、関東北部で東に50cm以上の動きがある中で、富士山では同じく15cmでした。35cm分の歪みがフィリピン海プレートを東へ引っ張ることになったのです。

 フィリピン海プレートは北西に年4cm動いていると言われていますが、ここには太平洋プレートの動きも重なっており、プレートは太平洋プレートに対して北上していると思います。この動きに注目すると年3cm程度がGPSより推測出来る値です。
 東にむけて35cmの引っ張りはゆっくりと方向を変えてこの3cmの動きに重なってゆく事になり、単純に年3cmで35cmを動かすには約12年分の動きです。

 分かりにくいかも知れませんが、この差分が10年分以上の歪みをフィリピン海プレートに与えたことになり、結果としてこの動きを10年分以上加速したことと同等なのです。
 この部分は科学としてきちんと評価すべき物になりますが、前例もなくこれからこういった物の影響を調べる予定です。プレート地震の周期が近傍のプレート地震の周期に影響し干渉しているかどうかになります。理論的には起きているはずです。
 少なくともフィリピン海プレートを引っ張ることには間違いありません。大きな影響があったからこそ、2011年3月15日に富士山直下でM6.4の地震が起きたのです。

 こうしてみると、2032年の東海地震の予想が2020年代まで早まっていると見る事が出来ると思います。ここに小田原地震が起きると東海地震が起きて富士山の噴火につながり、その後に関東深部の地震につながります。流れは1853年の小田原地震と同じ物になりやすい情勢です。(1854年東海地震、1855年安政江戸地震)
 加えてマグマ溜まりは311で地震が起きるほどつぶし込まれているので、噴火につながる圧力を高めており、ここにさらに周辺地震の圧力が加わるのです。リスクサイドから見るとある程度大きな噴火への備えが必要となるでしょう。

 この関東深部の地震は、イラストに説明したようにフィリピン海プレートが太平洋プレートに衝突していることで引き起こされる物です。過去の例を調べると関東大震災と元禄関東地震では同時に動き、それ以外では平均1年半で小田原や相模原の地震に連動して起きていました。M7クラスでもおかしくない地震です。
 現実的にも35cm分の歪みが関東の深部に蓄えられており、この地震が大きく動きやすくなっているのです。この点にも科学としてこれから向き合わないといけないのです。理解が進んだことで続きの仕事が増えた様です。

 富士山の噴火でマグマ溜まりが大きく潰れると、その影響でフィリピン海プレートがさらに大きく動くことになり、関東深部地震の規模にも影響すると思います。ここまでの大きな噴火にならない事を願っていますが、要注意の地震であることは間違いない物です。
 そして、このプレート同士の衝突は、百年、千年の単位ではフィリピン海プレートが太平洋プレートを突き破って太平洋プレートを引き裂いてゆく事になります。大きな地殻変動につながるのですが、この関東深部の地震の続きは来週改めて書きたいと思います。

稲生雅之
イオン・アルゲイン