地震に続いて今年からは噴火の解析を始めることにしており、今の時点でリスクのある火山として富士山を調べています。
富士山は誰もが噴火を心配する火山です。噴火に関する具体的なところを調べる必要があるので、地下のマグマ溜まりの形状から現在の情勢まで、まずは一通りを調べてみました。311の大地震以降は大きな変化が富士山にも起きており、2011年の3月15日のM6.4の地震以降よく噴火をせずにここまで来れた物だと思います。
311の地震の影響で富士山は東北東の方向に動かされており、地下の圧力が上昇したおかげで、富士山周辺の湧水量が急激に増えたとのことでした。
この種の湧き水の増加は地震に伴って観測される物があるので、地下の圧力の変化が増加する方向であったことは間違いないと思います。
富士山の噴火は1707年の宝永の噴火が有名です。この時は東海、東南海、南海の連動地震が起き、その49日後に富士山も噴火となっています。
地下のマグマ溜まりの状況は、49日前の地震により圧力が減る方向での動きになったために、マグマに含まれていた水分が水蒸気に変わった事による噴火と見る事が出来ます。圧力が下がることでこの変化が起きてガスがマグマ溜まりに発生し、ガスで発泡したマグマと一緒に宝永火口から噴出した物と言われています。
今回はマグマ溜まりの圧力が上昇する方向でしたので、この種のガス化は起こらず、大きな変化を引き起こすところには至りませんでした。マグマが地下の圧力上昇に伴い上昇を始めれば、マグマを噴出するタイプの噴火が起きてもおかしくないほどの圧力だったと思います。
専門家の解析では3月15日の地震の時点で、宝永噴火の時よりも最大で1.6倍高い圧力がかかっていたとのことでした。
富士山は溶岩を噴出する噴火も起こしており、864年の貞観の噴火では大量の溶岩により西湖と精進湖を生み出しています。それまで一つの湖だったのですが、流れ出した溶岩により分断されているとのことです。
この時は5年後に貞観地震が起きており、311よりも揺れは少し小さかったらしいですが、東北地方に大きな津波と被害を引き起こしています。
富士山の場合噴火も災難ですが、その後の変化にも注意が必要です。
311は富士山直下のマグマ溜まりを押しているようですが、押されて飛び出したマグマは地下の圧力を抜き去ることになるので、プレートのバランスを失ってゆく大きなきっかけになるようです。
富士の噴火は、周辺の変化がマグマ溜まりに影響して引き起こされます。この意味では関東周辺の地震と東海地震なども影響していますが、火山としての箱根山はすぐとなりにあり、影響も大きな物を持っていると思います。
箱根山も2001年以降地震が増えたり大涌谷の噴出ガスの量が増えたりしており、2013年2月には震度5の大きな地震も起きています。311の影響でもあると思います。
仮定の話ですが、もし箱根山が噴火すると面倒なことが起きる状況であると思います。箱根山の下にあるマグマ溜まりの大きさなどは不明瞭ですが、噴気活動も地震活動も起きています。箱根山駒ヶ岳の3.4km下までマグマが来ていることもあり、噴火は現実的な物になりつつあると思いますが、まだいつ噴火するのか、誰にも分からない状態です。
もし噴火する場合内部のマグマが大量に放出されると、すぐとなりにある富士山のマグマ溜まりを大きく刺激するでしょう。
この変化はマグマ溜まりの圧力を減らす方向です。宝永噴火同様の発泡からの噴火になる可能性もあるのですが、ガスが前回の噴火からの時間である約300年の間に抜けている可能性も指摘されています。マグマを噴出するだけなら大量の火山灰をまき散らすよりは被害危害を局所化することになると思います。
この点で心配になるのは、富士山周辺に存在する大量の水です。311後は富士五湖の水位が減少しており富士山の変化として騒がれているのですが、こういった水が湧水の形で地上に戻る分には大きな問題にはなりません。
箱根山の噴火にしろ、近傍の地震にしろ、局所的な地殻変動を富士山のマグマ溜まりに加えると、ここに水が入ってゆく可能性が否定出来ないのです。大量の水のマグマ溜まりへの供給は大規模な水蒸気爆発につながり、山体を大きく吹き飛ばすほどの威力を持てるのです。
これは最悪のケースであり、実は沖縄の比嘉さんの指摘していた最悪の状況です。以前はこのレベルの大噴火が起きることは考えにくかったのですが、今回周辺の状況をきちんと調べてマグマ溜まりの構造まで検討しています。その結果正直驚く結果となったのです。
今地下水は圧力上昇に伴い上に出てきていますが、これが下に入ってゆく圧力減少の状況が生じると、この可能性が否定出来ないのです。
加えてマグマが発泡して噴火すれば大規模水蒸気爆発は起きないのですが、発泡は起きにくい条件が指摘されています。現状ではこちらの可能性も否定出来ないのです。
現状がかなり危ういバランスの元にある事は理解出来てきました。箱根山の噴火も起きてほしくないし、周辺のプレート型の地震も起きてほしくない状態です。
プレート型の地震は
関東大震災 1923年発生 周期は200年以上
東海地震 1854年発生 周期は90年以上 既に周期を大きく超過している。
東南海地震 1944年発生 周期は90年以上
となりますので、注意すべきは東海地震です。東南海、南海の地震は2030年くらいまでは心配ないと言いたいところですが、311の影響次第です。2020年の発生でもおかしくなく、東海地震がいつ起きてもおかしくない以上はその影響を受ける可能性もあり、あと数年くらいでリスクが出てくるかも知れません。
関東域の断層地震も関東に大きな被害を及ぼしますが、この影響で富士山が噴火するかはまだよく分かりません。同じフィリピン海プレートの変化である場合、影響を受けざるを得ないのですが、距離他それほど大きく影響しないと今は思っています。
地震の観点からは、東海、東南海、南海の地震を2030年代まで伸ばすよりも、少し早めに小さく揺らす方が安全です。可能かどうかは分かりませんが、2020年代まではこのまま揺れずに進んでほしいと思っています。その後の先延ばしは恐らく有害でしょう。
火山の観点からは、今富士の噴火につながる動きはまずいと思われ、今地下にかかっている圧力がゆっくりと抜けることが必要で、5年でも10年でも良いので、先送りが必要でしょう。
箱根山の噴火は起きなければ良い物ですし、富士山の噴火は2020年代の東海地震に絡んで小さく起きるのが良いでしょう。可能ならの話ですが、水蒸気爆発につながる大きな変化は誰も望まないでしょう。
富士山のマグマ溜まりが大きく噴火により潰れると、ここから次の地震が誘発されますし、場合によっては別の火山の噴火にもつながる可能性があると思います。加えて関東の地震のリスクは高まるでしょう。小規模の噴火で収まって次の周期へと先送りしないと311の大きな影響を受けている分、大きな被害が広がることになる情勢だと思います。
結局火山の噴火も予測出来るようになる必要があると言う事でした。科学としての作業はこれからも続けることになります。富士の噴火に関しては地下の圧力構造を知りたくなるのですが、これは断層など深度地下の地震を予知する上での情報にもなる物です。
こういった機器の開発まで提唱することになりそうですが、この方面はらせんの力とプレートの動きなどの論文を書いて認めてもらう事からになりそうです。色々大変な年になりそうですが、がんばりたいと思います。
稲生雅之
イオン・アルゲイン