シリア国内のISIS空爆     9月24日

 こちらの予想より少し早いのですが、シリア国内に存在しているイスラム国の拠点に対する空爆が始まりました。準備をしっかりして一気に大量に爆弾を落とす物かと思いましたが、戦闘機と爆撃機の利用に加えてトマホークという巡航ミサイルが47発とのことです。急ぐ理由があったのかもしれません。

 有志連合を募りイスラム国を封じ込める予定ですが、空爆にはEU諸国の参加はありませんでした。これまでに自国に受け入れたイスラム教徒がテロリストになって、自国内部でテロを起こすリスクは低い物ではないと考えているようです。
 実際にイスラム国の軍に加わるためにEUから人が移動しているくらいですから、この恐れが現実的な物であることをよく分かっているのでしょう。

 米国側としてもEUに対するテロのリスクが上昇した事もあって、空爆を急いだという事情もあったようです。報道ではその様なリスクの存在に触れていました。
 シリアに大きな権益を持つのはフランスですが、空爆には参加しなかったらしいので、国内事情を見直しているのかも知れません。
 リビアの空爆は当然のように行ったのに、イスラム国へは空爆出来ないのがEUの姿でしょう。利益を求める上では空爆したいのでしょうが、テロで報復されるのです。

 アメリカ以外にはサウジなど湾岸諸国の王国が空爆に参加しています。イスラム国の脅威故に仕方がないのかも知れませんが、アメリカの庇護がなければイスラム国から自国を守ることが出来ないという状況もあるのではないかと見える状態です。
 トルコは自国からイスラム国への人の移動を黙認してきているので、ここで政策を転換するに当たってうまくしないとイスラム国から攻撃を受けるのです。空爆には参加していませんが、対処に苦慮しているところだと思います。

 ロシアは空爆は国際法違反だとしていますが、シリアが空爆を黙認すると声明を出したらしく、欧米の空爆に対して一定の理解と協力に転じてゆくのかも知れません。
 イスラム国が当初の予定よりも急速に大きくなって影響力を強めたので、予想外の事態になっているのかも知れないと思えるほどです。

 イラク戦争では様々な戦闘により、イラクの政権を倒すことは出来ました。今回はイスラム国を倒すことが必要になるのですが、空爆だけでは政権を倒すことは難しいと分かっているはずです。行動すべきはシリア、トルコ、イラク、イランという国境を接した国々の陸軍になります。この動きなくして空爆だけでは政権を倒すことは出来ないでしょう。
 大型の戦車や大砲は空から破壊出来ますが、ゲリラになる人々の行動を完全に制圧するには陸軍が必要であり、始めから分かっていることです。

 状況からすれば、イランはその領土にイスラム国のゲリラを入れないと思いますが、シリアにはその力がありません。イラクも現実的にはその力がない状況で、この先新しい政権でどこまで対処出来るかは分からないのです。
 この状況でトルコがイスラム国と敵対すると、自国だけが大きく戦争に引き込まれるリスクを背負うことになります。状況が明確になるまでは動けないでしょう。

 結局陸軍を出すところがないので、イスラム国は長い戦いを続けられることになります。これを倒すという名目でオバマ大統領の次の大統領が、軍をイラクに送るのかも知れないという情勢です。
 イスラム国は、そのベースはフセイン政権の残党とも言うべき人々の集まりでもあります。シーア派スンニ派という宗派のバランスの中で、クルド民族の自立も含めて3つに分裂してゆく流れが続くのでしょう。

 スコットランドでの住民投票で彼らの独立は反対されましたが、もし賛成票が多ければ誰も独立を止められなかったと言われています。するとこの先にも似たような出来事はたくさん引き起こされると思います。
 クルドの人々も住民投票を行って独立を宣言出来ると思います。トルコもイランも困ると思いますが、政治の流れとしてこの宣言を無視することは難しいでしょう。ウクライナのクリミア半島も住民投票でロシアになったのです。

 住民投票をどこまで尊重するかという部分が、今後は重要になると思います。独自の通貨を発行して行政を行うレベルであれば住民が数万人もいれば十分であり、世界には数々の小国が存在しています。この既存の小国の存在と変わらないという説明がなされた時、住民の意思をどこまで尊重するか、まだ世界にコンセンサスは存在しないのです。
 答えを現実的対応で求める状況が続くことになるのでしょう。国連のあり方の矛盾でもあり、国家のあり方の見直しにつながりそうです。

 EUみたいな地域同盟が存在する場合、スペインのカタルーニャ地方がスペインから独立しても、EUにとっては実質的には大差がないと見る事が出来ると思います。どちらもEUの一部であり、通貨は同じです。行政単位が増えることになりますが、EUにはたくさんの小国もあるので、同様に扱うだけでしょう。
 国連の枠組みを超える物に対して、そのメリットが出てくる状況です。この意味で地域同盟が他の地区にも広がってゆく余地があるでしょう。

 9月に円と米国債、米国経済への注目という予想をしていました。円は109円まで上昇しましたが、この先大きな円高になるかはまだ分かりません。テロが起きれば今の株高は変化すると思いますし、1バレル90ドルに低下している石油価格も上昇に転じるでしょう。この動きが実際には求められると思っていますが、混乱は10月に延びてゆくのかも知れません。
 9月よりも10月のテロや紛争がらみの混乱が可能性が高くなっていますが、この先の空爆の展開次第でしょう。

 心配しているウクライナはEUとの協定に署名しましたが、その中には経済の協定が含まれず先送りになったと言われています。この経済の協定がロシアの潰したい物でしたので、実質的にはロシアの要請が認められています。ウクライナとロシアとEUでの話し合いが出来たようです。

 その後にウクライナの大統領がアメリカの議会で武器の供給を求め、ロシアが爆撃機をアメリカの領空に少しだけ侵犯するという演出がなされました。
 表面的には今後もいざこざは続くと思われますが、ウクライナの危機は1年くらい先送りすることが可能になったと思われます。現地の人々は血を流したくないという事でしょう。今後も紛争を求めてよからぬ介入は続くと思いますが、このエリアには明るい兆しでした。今月の経済の混乱リスクを大きく下げたと思います。

 日本の地図から見る大地の動きですが、今週の分は今まで通りの状況に戻っていました。やはり時々先週のデーターのように大きく動く時があり、その場合少し大きめの地震につながりやすい様です。
 同時期M7クラスの地震がアラスカやインドネシアなど海外で起きる心配をしていましたが、この地震はM6.7でマリアナで発生となりました。その場所はフィリピン海プレートの東南部になり、その後M5クラスが琉球列島西部と小笠原に連鎖しています。このクラスの調整はプレート内部と周辺でまだ続くでしょう。

 いま台風がフィリピンから台湾に北上し、これから日本にもやってくるところです。温帯低気圧になった様ですが、この台風も先週見られた大地の動きを調整する役割を果たして来たようです。ありがたい事なのですが、リスクの大きさが分かる感じです。
 日本域としてはフィリピン海プレートの北側に調整が残っていますので、このリスクが大きく顕在化するところで改めて情報を提供したいと思います。北海道西方など日本海側にもリスクは広がりそうな感じです。

稲生雅之