MH17墜落に関するロシアの説明 8月5日

 7月17日にウクライナで墜落したマレーシア航空のボーイング777機ですが、ブラックボックスの解析結果が出るまでにはもう少し時間がかかるようです。
 普段の私たちは西側の報道ばかりに接していますので、今回のこの墜落に関して西側と東側の違いを見てみたいと思います。

 西側の報道は多くの方のご存じの物で、ロシアの提供したBukミサイルシステムが親ロシア派により777機を軍用機と間違って撃墜したとする物です。
 この根拠は米国から提出されるとしながらも、肝心の17日の墜落時の物はまだ公表に至っておりません。あると言っている資料の公表が遅れる理由をどの様に説明するのか分かりませんが、始めに話していた証拠としての資料の提示は未だ行われていないのです。

 一方のロシアの情報ですが、ロシアの国防省の公式発表資料が英語でありますので、誰にもアクセスが可能で状況の理解を助けてくれています。
 彼らの論点は4つほどあり、21日の時点でこれを公表し、EUに対して正式に資料提出をしているようです。大切な事は、彼らのターゲットはEUであることです。

1)MH17便は、ドネツク上空から北に進路がずれており、その後戻ろうとして事故に遭っている。なぜ通常の航路からそれたのか。
 この時の航空管制とのやり取りがブラックボックスに記録されているはずである。
 添付の画像の1枚目で、水平に3つの線が書かれておりこれが航路です。飛行機が上にそれて戻ろうとしている様子が描かれています。

2)Su-25という軍用機がMH17便の墜落時、すぐ後ろの3~5km地点で確認されている。彼らは何のために軍用機を運用していたのか。この軍用機は目撃情報ありです。
 5km以下のレーダーに写らない低空から高度約10kmくらいまで急激に上昇し事件が起きているとのことです。
 添付の画像の2枚目です。中央の小さめの飛行機がSu-25です。その左側がMH17で、残りは近くを同じ時間帯に飛んでいた3機のボーイングです。

3)Bukミサイルシステムはウクライナの物が17日の数日前から運用が激しくなり、当日を迎えている。ドネツクの東方で墜落現場を可動範囲に入れる位置になぜ必要だったのか。親ロシア派には打ち落とされるような航空機はないし、ロシア機の撃墜も考えられない。

4)MH17の墜落時にウクライナの上空を米国の軍事衛星が飛んでおり、写真があるはずである。この写真の公表を望む。Su-25の機影などが確認出来ると思われる。

 この問いかけに対してウクライナは捏造した写真を返しているとのことで、ロシアはすぐに気づいたそうです。
 西側では現地の司令官との会話を盗聴した物がいかにも証拠のように流されていますが、これも音紋解析をしたところつなぎ合わせの音声であるとロシア側は答えています。

 ロシアはロシア側の軍の基地で上記の通信情報とレーダーによる情報の解析を行っていたようです。少しずれてプーチン大統領も同じ空域を飛行していますので、彼の安全を守っていたのは間違いないでしょう。紛争地の状況を確認するのは当たり前だと思うので、この程度の情報は存在して当然でしょう。

 Su-25の存在をウクライナは否定していますが、本当のところは分からないでしょう。ロシアがこの種の情報の公開をした時点で、ロシアにはその続きの確かさを証明する情報の公表が待っているかも知れないのです。
 特に期待しているのは、ブラックボックスに録音されている航空管制のやり取りの情報でしょう。ウクライナはこの情報の公表を拒んでいますが、ここに録音されている物は今更消せないでしょうから、この航路変更の意味が推定出来るかも知れません。

 残念ですが西側のブラックボックス解析で、この部分が正しく公表されるのかは分からないと思います。イギリスに運ばれてオランダとマレーシアが関わることになると思いますが、実際には駆け引きの場でしかないでしょう。
 ロシアはこの会話の情報を別途持っているのかも知れません。そう考えるのがこれまでの動きを簡単に説明するのことになるのですが、最後にふたを開けるまで結果は分からない様です。Su-25が親ロシア派のBukミサイルを777機へ誘導出来るとは思えないのですが、この可能性も一応残っています。

 オバマ大統領はプーチン大統領の電話でMH17の撃墜事故を知ったそうです。ウクライナでのCIAと米軍の動きの前に、シリアの時と同じように適切な動きをすることを阻まれている感じです。
 それでもシリアでは上手く化学兵器を取り除くことが出来たので、今回もなにかまた思いもよらない情報公開が起きてくるかも知れないと思えるのです。

 ウクライナはIMFから緊縮予算の執行を求められており、この事故の直後に政権は連立与党の連立が崩れ、これから国会議員の選挙になるかも知れません。厳しい財政状況の中にあって軍事のミスは大きく信頼をなくし状況を悪化させるでしょう。
 ウクライナを守るためには、ブラックボックスの情報をごまかす必要があるようですが、この結果を出せば、今度はロシアの反撃を受けてウクライナの信頼をなくす可能性が大きくなるでしょう。この状況に至ることを間接的に求めているように見えています。

 EUはEUとして正義に基づき解決しないと、自分たちのエネルギー問題になって跳ね返ってきます。戦争を望まないEUとロシアが上手く連携することで、ウクライナが向き合うべき彼らの負債が前面に押し出され、紛争では解決出来ないことを教えることになると思えます。ロシアは21日の情報でEUとの関係のあり方を問うた物と思います。
 状況としてEUは米国の一部に、ウクライナの紛争を拡大されることを望んでいないようです。彼らの動きとオバマ大統領の動きで紛争の拡大を抑えられるかどうかでしょう。

稲生雅之