この先の混乱につながる金融の動きが出てきています。FRBのイエレン議長は、今縮小中のQE3を10月をもって終了する流れを公表しました。これまで米国の株価を押し上げてきたQE3がやっと終了する事となりました。このQE3により生み出されたバブルとも言うべき状況に、これからやっと向き合う事になります。その後米国経済の実態が明らかになるでしょう。
今回の終了目標の10月というタイミングですが、このタイミングで物事を動かすのではなく、心配してきた9月と12月くらいに変化を引き起こす流れを望んでいると思われます。
現状の政治的な流れですが、最大の懸念材料とみていたイランの核開発協議は約4ヶ月の交渉延長となりました。恐らくこれに合わせてISISの状況も変化するでしょう。
これに関連してイスラエルもパレスチナのハマスに攻撃を仕掛けています。ハマスがエジプトのムスリム同胞団の支持を失い、シリアからの援助も大きく減らし弱体化しているところへの攻撃です。始まりはイスラエルの少年の殺害ですが、今この状況を引き起こす余裕はハマスには全くなく、ハマスの否定する中での大攻撃になっています。
敵の弱体したところを狙うのを止める事は実際問題として難しいのですが、周りから見てここまであからさまに嘘と思われる理由で攻撃に踏み切ると、その後の反動が大きな物になると思います。ここでもその大きな反動を誘っているのかも知れませんが、今のイスラエルにはハマスをここで大きく弱体化出来るという勝算があるようです。
ハマスには出来る事が限られていますが、イランの核開発協議が引き延ばされた事と無関係ではないかも知れません。イランは間接的にハマスを支える事にも可能性はあるでしょうから、ここまでの狙いを持ってイスラエルが行動し、イランの核施設の爆撃につなげる事、場合によってはハマスに放射線兵器を使わせた事にして、自分たちは核でイランに報復するという事まで視野に入っているかも知れません。
イスラエルの暴走は米国の望まないところであり、今回もケリー国務長官の横槍などで傍若無人の振る舞いには一定の歯止めがかかっているようです。
イラクではウランが40kg奪われているというニュースが流されています。これまでこの様なニュースにはあまり接する事がありませんでしたので、やはり放射線兵器への流れを作り出そうとしている物だと思います。
混乱するイランの大学に40kgのウランが保管されている事その物に疑問を感じています。危ない物であればせめてバクダットやそれこそ米国大使館にでも保管・回収すれば良い物でしょう。とにかくいやな感じのニュースでした。
4ヶ月という時間を使って、戦略を練り直すという所でしょう。
このエリアにはロシアの影響力もあるのですが、ウクライナのマレーシア航空ボーイング777機の墜落事故で、しばらく旗色が悪そうです。どうして再びマレーシア航空ボーイング777機なのか大きな疑問に感じていますが、誤爆の可能性が高いのは現実かも知れません。打ち落とす方にも危険地域を承知で飛行する方にも、何らかの間違いがあったのでしょう。偶然が歴史を悪い方向に向けたところかも知れません。
正直なところ高いリスクを取ってまで燃料代を節約する理由はよく分かりません。何か起きれば少なくとも今季2度目の墜落になりますから、普通に考えると大きく評判を損なうこの種のリスクには敏感なはずだと思います。ここは本当によく分からない部分でした。
ロシアはちょっとした調整で国連決議に応じていますので、なにか彼らの期待する情報の公開もあるのではないかと思います。誤爆を誘ったなどで西側の偏向報道に対処すると思いますが、ウクライナ東部の独立運動の暴走が背景にあるのであれば、これらは落ち着く方向になると思います。平和のためにも望ましいでしょう。
この様な感じで政治は7月に正念場を迎えるのを延期し、4ヶ月の前後に焦点を振り分けるように感じています。それぞれの時期に動きが出てくる事でしょう。
イエレン議長の10月というタイミングが全体の流れを左右している様子です。10月に向けた揺さぶりは今も続いています。
BRICSが今後7年間で合計1000億ドルを拠出し、自分たち向けの開発資金にするという話が出ています。この種の開発資金はこれまで世界銀行とIMFの拠出してきた物ですが、ここに来てまずIMFからの離脱につながりかねない話です。
背景にあるのは2012年に決まったIMFへの出資比率の修正作業が、米国の議会の反対で進まない事です。
世界銀行もIMFも米国が全体の17%近くの出資比率をもつ国際金融機関です。こういった組織を使って開発途上国の資金需要に応えてきたのですが、他の国よりも多い出資比率を背景に、米国と欧州の金融機関のお金儲けの場と化してきていました。途上国の危機につけ込み緊縮財政と通貨の暴落を仕掛け、アジア危機に見るように各国の資産を買いあさったり、高い収益率で資金を吸い上げてきているのです。
これらはWTOと合わせて米国の一部国際資本のお金儲けのツールでした。ここに来て米国もリーマンショック後は資金が続かなくなり、IMFでは中国とロシアの出資比率が上がる時を待っているのですが、米国議会は動かずIMFの改革は進まないのです。
業を煮やしたBRICSが動き、1000億ドルの揺さぶりが米国に向けて行われたという流れです。
この話には続きも準備されており、先日書いたアルゼンチンのデフォルト騒ぎに関連して、なんと中国がアルゼンチンに75億ドルの開発資金を投じるとのニュースが流れました。水力発電所を2カ所作るという話だったと思います。
これを世界銀行やIMFが実施する場合であれば、金額を経済予測以上に膨らませ、必要資金75億ドルに対して150億ドルを貸し付けてプロジェクトを失敗させるのです。おまけにこの資金は世銀とIMFの指定する業者に流れますので、建設会社などは外国資本で作業員まで海外から来るのです。国内に落とされる資金は微々たる物で、後には借金の山が残るのです。これはあまり知られていませんが多くの案件で起きた現実です。
アルゼンチンはこの様な状況を理解した上での中国からのドル借款でしょうから、世界銀行やIMFよりも少しはましな状況があるのではないかと期待しています。実際の所は数年で結果が分かるでしょう。
いずれにしても、中国は米国の1600%の利益を狙うヘッジファンドとは異なり、アルゼンチンのために資金を投じるというポーズを取ったのです。米国の強欲ぶりを世界にアピールしたいのでしょう。
以前はこの様な態度を取れば米国にドルで資金的に干されるので、ドルの流通に支障をきたし国力を落とすところでした。いまの中国、ロシアを始めとするBRICSには米国を金融で揺さぶるという選択肢がとれるほどにまでなってきたのです。大きな変化なのですが、もちろん背景には米国の衰退により世界金融が不安定になって来ているという事があるのです。
IMF出資比率の話は前から出ており、この流れは既定路線です。米国は追い込まれるところまでは織り込み済みで、これから攻勢に出てくるのでしょう。
攻勢に出られるところは中国の理財商品がらみのデフォルト騒ぎの拡大か、自国の地方債などの債務危機の演出です。ウクライナの破産も含めてドルを不安定に出来るところを演出するのかも知れませんが、もちろん株と債券の大きな値動きで儲けを狙い、相手の通貨や国債にダメージを与えようとするのでしょう。1000億ドルのポーズには、必ず彼らのお仕置きとしてのお返しがあると思います。
9月に向けてどの様に動くのか、状況が煮詰まってきている事は確かです。同時に不測の事態も引き起こされているので、双方の思惑通りに事が運ぶのか、両陣営とも分からなくなっている部分があると思います。
まずは経済を混乱させる流れが先行し、そこから戦争へとつなごうとしているように見えています。引き起こされる経済の混乱を冷静に見てゆく必要があるでしょう。経済が崩壊して大変な事になるという状況ではなく、何かと組み合わせた不安をあおる演出が行われるのです。
稲生雅之