劣化ウラン弾による健康被害は湾岸戦争とイラク戦争の帰還兵、イラクのファルージャの人々、子供達の状況から明らかに存在している物です。これに対して、米国政府とWHOなどはこの健康被害と劣化ウランのつながりを否定しているのが現状です。
劣化ウランとは核燃料ウラン235を濃縮したときに出てくる残りかすのウランです。主にウラン238であり、放射性の危険な物質です。劣化ウラン弾とは対戦車砲などの弾頭に利用された劣化ウランの塊になります。発射時の砲塔から劣化ウランの蒸気が微粒子になって米国兵士を襲い、戦車に着弾した劣化ウランも同様の効果を及ぼすのみならず、微粒子を拡散させて近くに住む子供達にまで影響を及ぼしたのです。
日本でも低レベルの放射線は安全であるとの議論がまかり通っているのが悲しい現実ですが、日本では福島の子供達の甲状腺に腫瘍が多く発生しており、放射能事故とのつながりをあとどれだけの期間否定できるかという状況になっています。
チェルノブイリでは4年目から甲状腺異常が多く見られているので、今出てきている甲状腺の異常は原因が分からないことにされています。もちろん今既に異常が出ているのですから、放射能が原因ならば間違いなく来年はもっと増えることになります。正確な情報が公表されればの話になりますが、本来まだ影響の少ない期間にもかかわらず異常が見られると言うことは、この先に出てくる異常はもっと多くなると言うことになります。
内部被曝の科学的評価としてこの問題にも改めて取り組む予定ですが、今回は今年の6月8日に愛媛県で起きた化学工場の火災の事故について触れたいと思います。
この愛媛県の工場には劣化ウランが少なくとも昨年の12月までドラム缶555本分保管されていたとのことです。公式にはこの劣化ウランは燃えたり爆発したりしていないとのことですが、事故当日の6月8日に愛媛の放射線量の上昇があったと報告するブログもあるので、現実には何か問題が起きたとみる方が正しいのかも知れません。大きな被害でない分、隠されている可能性もあるのでしょう。
この事故をここに取り上げる理由ですが、この劣化ウランに向けたテロとも呼べる行為は、沖縄の比嘉さんにより事前に失敗することが警告されていたからです。これが現実に失敗として起き、少量と思われますが放射能が漏れ出しているのです。
ドラム缶555本分の劣化ウランにどうやって引火させて、爆発させるつもりだったかは分かりません。また、どうやってこの延焼というか、誘爆を防いだのかも分からないのですが、これだけの量の放射性物質を拡散させれば、長期的には大きな被害が出たことは間違いないと思います。
実際にはウランの被害はすぐに人体に出ることはないでしょう。この理由でアメリカもWHOも被害の実態を過小評価できるのです。(WHOはICRPというイギリスのNPOである国際放射線防護委員会に法的に逆らえなくされているだけの様です。)
燃焼により拡散されるウランの微粒子が人に吸い込まれて体内に吸収されると、この微粒子に含まれるウランの放射性が大きく健康に影響します。アルファー線と呼ばれる放射能を長期にわたって同じ場所から放射しますので、その部分の生体細胞を大きく損傷します。その部分のやけどと遺伝子の損傷による癌化のリスク、健康全般に関わる大きな影響が及ぶことになります。そして、Cs137よりも少量でも有害なのです。
今日本で問題になっているCs137・放射性のセシウムは体液に溶け込みカリウムを置換するだけでなく甲状腺、心臓、腎臓などに蓄積して健康被害を及ぼします。これに比較するとウランは重金属の毒として作用するだけでなく、その放射性により人体を蝕むことになります。
どうして劣化ウランに対してこの様なテロを行い、日本人を不安にしたいのでしょうか。もちろん不安心理をあおる目的が大半であり、この時期には集団的自衛権の議論が進んでいるところでした。このテロがうまく行っていれば、この議論が今回のように停止せず、公明党の抵抗が自民党により押し切られていたのかも知れないと思います。
誰がこの様なテロを望むのかは明確ではありません。戦争を望む人々には様々な組織があるので、その中の一部がこの行動を起こしたのでしょう。
ネットで調べてみると、この種の化学工場での火災事故は多いとのことです。狙われているレベルではないかとまで書かれています。今回は未遂でしたが、この事をマスコミも政府も大きな問題にはせず、原子力発電所へのテロのみを恐れることを公表しています。
テロとしてみると国民が広範囲に影響を受けるのに、たいした反応がないのは不自然な物に見えます。テロに成功するまでこの種のドラム缶の保管は厳重な物にならないのでしょうか。警察のリスク意識もこの点は骨抜きにされているのかも知れません。
世界では今、イラクの3分裂の問題、ウクライナの紛争の問題、アルゼンチンのデフォルトの問題、タイのクーデターやエジプトの選挙など、様々な問題が進んでいます。
この中にあって、アメリカの株価は最高値を更新しており、イエレン議長がQE3を絞り込んでいるにもかかわらず、株価への加熱は止められずにいます。
一方でECBのマリオ総裁は、EU域内の景気の落ち込みに対処できずに苦慮しています。これまでにあふれ出した資金が上手く制御されることなく、市場での行き場を求めて動いている感じです。
日本での劣化ウランによるテロが、大きな爆発を引き起こされる中で報道されていたら、何が起きたでしょうか。こういった事にも注意が必要になっていると思います。犯行声明に合わせて世界的な経済の低落や他国との反目を演出させられるだけでなく、国を守る意識が行きすぎれば、戦争への道を歩まされやすくなっていたでしょう。911後のアメリカのように、自国を守るために戦争へと扇動されるのです。
グラフで日本のテロを見てみると、5月にオバマ大統領に関連するテロの可能性で数値が高まっていましたが、6月は低くなっていました。今回の物が無理を押した分失敗したのかも知れません。
戦争を望むにしては同じ手法を繰り返すだけの幼稚に見えるシナリオですが、実際にこの仕掛けを行っている人々が存在しています。今回失敗はしたけれども、まだ次を狙って行動していることを忘れてはいけないと思います。少なくともこの様な稚拙な手法でも簡単に成功させられる可能性があるのです。この様なリスクの高い物に国としての対処が適切に出来ない事は、本当に情けないことだと思います。
稲生雅之