多くの人がワールドカップサッカーに興味を引かれているところで、イラクの状況が大きく変化しようとしています。
今年の1月に首都バクダットの西へわずか60kmの場所にあるファルージャという都市が、今回のテロリストとされているISILによって占領されていました。
このISILはイラク・シリア・イスラム国とされたりISISになってイラクとレバントのイスラム国とされたりしています。シリアでの内戦を戦っていたアルカイダ系のグループらしいのですが、今はアルカイダとは関係のない組織であるとのことです。
わずか1万人程度の戦力で5月から準備を始め、今月に入って北部のバスラ、キルクーク、首都の北方150kmのティクリートまでを陥落させて首都を伺う情勢らしいとされています。
イラク政府側の戦力は150万人とも言われていますので、これで勝負になるはずなどはなく、何かおかしな情報操作がなされているとすぐに分かるようになっています。
まず、ファルージャという都市を奪うことが出来る理由からおかしいのです。シリアから来ているのであれば、シリアの近くがまず陥落し、それから徐々に南下してきて今の情勢ならまだ理解出来るのですが、補給もままならない遠くの場所ファルージャを最初に陥落させて支配を維持するのにどれだけのことが必要なのでしょうか。
今回の争いはISISがイスラム教スンニ派であり、イラクの現政権マリキ首相のシーア派とは異なります。宗教の争いでもあるのですが、これはイラク戦争の引き起こした支配層の逆転から始まっている物に見えています。
イラクのフセイン元大統領はスンニ派であり、イラクでは少数派でありながら政治支配を行っていました。彼が戦争に負けてその後実権を握ったのがシーア派になります。
このシーア派もアメリカがバックに付いている間はやりやすかったのでしょうが、米軍の撤退を経て、その支配が維持できなくなりつつあるようです。
シーア派ですから、隣の大国イランの支援を受けることは可能ですが、現状ではこれに頼りすぎると国が危なくなると言う意識も働く様子です。今回のスンニ派の攻勢に宗教的な動きとしての防衛戦争が呼びかけられて、100万人もの人々が集まろうとしているところです。戦力の実際の所は見せかけが多い物なので、正確には分かりません。
結局イラクの国内での勢力争いが激化しているという事なのです。恐らくフセイン大統領の時代にイラクのスンニ派だった人々は、長く潜伏の時を過ごしたのでしょう。米軍の撤退をチャンスとみた彼らは、ISILの名前を使うことで自分たちの正体を偽装し、スンニ派の自治区を作ろうとしているようです。
偽装しないと米軍がイラクで負けて逃げた言われることを恐れて、戻ってくるかも知れないからでしょう。
この中にあって、クルド人とも協力関係を結び、互いの民族自決を尊重する中でクルドの人々に経済的利益として石油の出るキルクークの支配をゆだねているようです。お互いに協力し合うことで、シーア派との争いに望もうとしているようです。
実際にこの状況の確認が行われるまでに時間がかかると思いますが、最初にファルージャを陥落させたのもスンニ派の人々であり、シリアの拠点からISILとして侵入していると言うよりは、イラク西部のスンニ派の人々が彼らの名前を利用して引き起こしたものでしょう。
2003年にブッシュ大統領が始めた戦争でしたが、結局イラクを支配することは出来ませんでしたし、ここに来てフセイン大統領の残党に地域を奪われてこれを取り返すこともままならないのが現状です。緒戦の勝利は得られましたが、結局イラクを支配するどころか、民族、宗教に応じて3分割せざるを得ないという状況に追い込まれているのです。
今年はアメリカの中間選挙の年なので、この混乱をイラク戦争におけるアメリカの負けであると率直に書くことがマスコミには出来ないようです。それでもあと数年たつと結局アメリカはイラクでの戦争に負けたと言われるようになる所に来ていると思われます。少なくともイラクのスンニ派は、時期が来たら我々は勝ったと言い始めるのではないでしょうか。
現実にはまだ続きがあって、この混乱はイランとシリアの準備した物でもあると思われます。7月中にイランはアメリカと核管理の合意に達する必要があるのですが、なかなか厳しい状況であるとリークされており、これから直接会話が始まるというタイミングでの出来事でした。
イランはシリアを助けており、ISILとも接点があるはずです。今回のバスラの陥落もキルクークのクルド人支配も用意周到に準備されており、たいした被害もなく速やかに進んでいます。現状もまだシナリオ通りであり、これから米軍の弾薬の在庫処分をかねて空爆が行われるのではないかと思われます。
この結果をいかにも効果のあった物のように演出すれば米軍のメンツは保て、軍産複合体を喜ばせるだけでなく、選挙にも有利に働くでしょう。戦果の確認などまともに出来ないのが混乱時の状況なので、メディアにただ欺かれるのでしょう。
グラフで中東戦争を見ると戦争で高いのは5月になっていて6,7月と低下してゆきます。実際に残る戦闘のシナリオはこの演出だけなのかも知れないと思えます。その後イラクの実効支配が3つの地区に分かれるのでしょう。この可能性が高まっているようです。
経済的にもこのタイミングでの株下げなどの演出を伴うのではないかと思います。まだ石油価格が少し上昇しただけですが、米軍の空爆に向けての動きが明確になると、リスクから株は下がるのでしょう。7月くらいまではこのリスクを見る必要があるようです。
中国でも不動産価格の下落が目に見えてきており、政府の公式発表よりもかなりひどいと言われています。今年中に大きく下げるらしく、こういった所からも経済を揺さぶる情報を流す準備が進んでいることを感じられますので、変化に注意が必要でしょう。
実際に物事がシナリオ通りに動くかは分からないものです。大きな内乱につながるリスクは0ではありませんが、イランもイラクも宗派間の戦いには疲れているように見えています。この先宗教と民族を尊重した自治が求められるようになるのでしょう。
そしてアメリカの動きの結果、イランとの一歩進んだ和解を経てイラクの3分割が表面はともかく現実で実効的なものになるとみています。
地震のコメントです。ご協力頂いた方ありがとうございました。結局関東では地震は起きず、関東の少し南から東北一帯にかけてのM5クラスの調整が行き渡ったところだと思います。存在達の隠れた目的がこの部分への調整だったと思われます。太平洋と北米プレートが普段よりも高い頻度で揺れることになりました。残念ですが、隠れた目的にはすぐには気づけませんでした。
北海道の分は西側の樽前山付近とその南の深いところで小さく揺れただけです。これで終わりかまだ分かりませんので、あと少し様子を見て頂ければと思います。
稲生雅之