4月の情勢と今後の地震について   5月1日

 4月末の心配していた地震ですが、フィリピン海プレートの調整は少し先まで遅らされている様子です。それぞれ予想よりも位置が少しずれましたが、カナダのM6.6とその後のトンガのM6.2の発生により、取り敢えず大きな地震の連鎖は収まっている様です。
 M5.6と小さいですが、28日にフィリピンと台湾の中間点くらいでの地震が起きています。この分と奄美大島で起きたM5クラスの地震により、久米島と伊予灘、南海プレートに関連する地震はしばらく延びるように小さく調整された物と思います。

 この状況がどれくらい続くのか分かりませんが、他のエリアでの緊張は緩和されそうな状況です。M7を越える地震は年間十数回だと思っていますが、今回の集中は7回が4月の1ヶ月間に起きており、地殻の緊張が大きかった物と思います。
 5月は他の月に比べると地震の多い月になります。今後沖縄の比嘉さんから警告の出る場合には、その前後の状況を調べて科学的な解説と予想をしたいと思っています。

 フィジー諸島とカムチャッカの数百kmの深度地震は、現状で普通に起きる物のように感じています。ここでのM6を越える地震は時々起きてもプレート全体の調整です。
 これに対して各地で100km以下の浅いところで起きる地震には、M6~6.5を越えるところから自分と他のプレートの周辺への連鎖が起きるようです。今回も今後関連部分に残された緊張がそのまま続いて連鎖してゆくケースもありうると思います。

 この連鎖は数時間から数ヶ月での範囲の連鎖です。どれくらいの時間が必要なのか分かると良いのですが、ここはまだ難しく大きな地震の平均値を使うしかありません。現状長くても3~4ヶ月程度と思います。トリガーイベント次第かも知れません。
 地震のメカニズムの理解に合わせて、ある程度の範囲で連鎖の状況が予想できるようになることを目指したいと思います。

 地震がいつどこで起きるかを明確にするレベルにはまだ届きません。現状ではプレートのある程度広い場所に、地震のリスクが高まることが分かるようになるレベルと思います。
 本来であれば、固着点を探して評価すればもう少し位置も絞れると思います。この為には今の地震波の計測だけでなく、電磁波や地電流の評価も必要になります。
 日本のプレートの境界は大半が海底にありますので、陸上とは異なり地電流のノイズは少なくなります。この周辺の状況を正確に調べるようにすれば、もう少し精度が上がるでしょう。これは間違いありません。

 科学的にも工学的にも、地震という現象を地震波という振動だけで評価するのは、現象の理解として明らかに不十分だと思います。地震の前後に電気は明らかに流れていますので、この評価を行って参考指標にするなど、評価の種類を増やさなければ、地震の理解も進まないでしょう。
 この意味での地電流や電磁波の伝搬異常などは様々なデーターを提供してくれますし、宇宙天気の他にもGPSによるプレートの移動情報や、断層面に顕著に表れている磁気異常なども指標になり得ると思います。

 地震のメカニズムを論文に書くと、その評価が必要になってゆく事になると思っています。こちらの予想は比嘉さんの外れを願う警告とは異なり理論的な物ですので、理論を正しい物へ修正してゆくためにも予想をある程度当てる事が大切になります。そして間違えたらその間違いを評価して理論を修正する事になります。

 こちらの目的は、地震につながる固着点を探し出して評価する予知手法の構築を促してゆく事です。論文に書く仕組みでは、月と太陽の重力で生み出されるプレートの周辺部の動きを止める物が地震につながる固着点になります。1年で数cmのプレートの移動の動きと、大きな地震で動くことになる数mのプレートの動きと、この日常的な引力による動きは共存しているのです。

 311と2013年の6月末の南海トラフのスロースリップは、この地震と現象の発生時期よりも早く、ある種の地震のパターンに前兆が見られています。データーを整理して論文にしますので、この部分も改めて公表致します。プレートの広域に影響が及んでいるのです。
 今回の西之島の噴火は、この噴火が固着点の発生を表している様子です。こちらにも同様のパターンのデーターを確認しています。

 発生した固着点は様々な振る舞いをします。大きな地震が起きる前に前震と呼ぶ本震よりも少し小さな地震を起こすケースもありますし、電磁波の伝搬異常を数日前から起こしたり、数ヶ月前から電磁ノイズをたくさん出すようになったりします。
 この中にあって311の発生前に起きた電磁波ノイズは多くの人に知られていますし、南海トラフのスロースリップはGPSによるデーターです。地震の震動以外の複数のデーターも予知に大きく役立つ物であると推定され、それぞれの特徴が生きるのです。

 311が起きるよりも早く、こういったメカニズムが正しい物だと受け入れられていたとしたら、私たちの311に対する対処は全く異なっていたでしょう。
 311が起きる直前にはM7クラスの地震が前震として起きています。この地震が前震か、本震であるかは今の私たちには分からないと思いますが、少なくともM7クラスの固着点の発生を明確に告げる物であり、この固着点の消滅まで様々な対策をすることが出来たでしょう。

 M7がもし前震であるとすれば、M8の本震発生をリスクと見なし、周辺の原子力発電所を1ヶ月止めて地震対策の点検をしても大きな経済的損失にはならなかったでしょう。
 今の私たちにはこの種の固着点を評価するシステムがまだありませんが、地震の平均的発生間隔から考えても数ヶ月間停止すれば良いのではないかと思います。IMFでさえ指摘するように、少しくらい元々稼働率の低い原発を停止しても影響は小さいのです。
 地震で損傷し臨界事故を起こした炉心から放射能が漏れ出すよりは、はるかに小さな損失でこのリスクを回避できたはずです。もちろん福島を経験したからこそ言えるのです。

 もう一点は、地震の発生位置の傾向が急に変化する可能性があることに理解が必要です。この意味は遠い過去において地震が起きただけの場所は、今まで数万年間地震が起きていなくても、状況によってすぐにでも地震の起きる場所に変わると言うことです。
 古い断層の痕跡が認められる場所には、近傍の予期せぬ火山活動などにより地震が来る可能性が高まるのです。

 例えば西之島の固着点の引き起こす伊予灘の大きな地震のリスクは、伊方にある古い原子力発電所を簡単に損傷できるでしょう。中央構造線上にあるという意味でもいざとなったら強い地震が起きる場所の真上にあるのです。
 また、若狭湾地区の原子力発電所は、近傍の古い火山の噴火が起きれば、すぐにでも古い断層の動きを伴う地震が心配になるのです。このエリアで古い断層の上にある原子力発電所も大きなリスクを持つと認識される事になるでしょう。

 過去に原子力発電所を作ったときには、私たちにはまだこの種のメカニズムが分かっていませんでした。当時の地震のリスクと地理的な条件だけから決められた場所ですので、いまこの種の原子力発電所を廃止せざるを得ないことは仕方がないのです。
 未来を考えず今だけの経済的利益を考えて無理して運転すれば、生きているとも言うべき地球の動きの前に、第二第三の福島同様の原子力発電所の事故が起きるだけなのです。

 次回連休明けには、ウクライナの情勢と、経済に関する情勢をお送りしたいと思っています。日本の消費税の影響と、日銀の量的緩和の行方に注目しています。

稲生雅之
追記
 HPをアップしてしばらくしたところで、ローヤリティー島というソロモン諸島の近くでM6.7(速報値)の地震がありました。5月1日の地震です。
 この位置でこの大きさだと、ソロモン諸島の緊張を解除する方向だと思いますので、フィリピン海プレートの緊張の解除にも役立つと思います。
 このエリアでの大きめの地震はトンガの物で一段落と早とちりしていました。当初の心配だったソロモン諸島の緊張がまだ残っていた物です。
 昨日より地球には電気が流れていて、オーロラもきれいに見えていました。この事もあり昨日は少々心配していたのですが、その影響が終わるまで我慢してから評価すべきでした。やっぱり経験の蓄積が大切なようです。