オバマ大統領について触れたところで、ロシアのプーチン大統領についても簡単に説明しておきたいと思います。今後のウクライナと中国の行方を見てゆく上で大切になると思うからです。
プーチン大統領は西側の報道では独裁者のように描かれていますが、実際の政策ではどの様に振る舞っているのでしょうか。
西側の報道機関は、今回のクリミアのロシア併合について、国際法に違反すると伝えています。94年にかわされたブダペスト覚書にあるウクライナの領土保全の保証に反するとしています。
ロシアの説明によれば、クリミアと同様の方法で西側はコソボを独立させているので、国際法の違反には当たらないとしています。西側は自分たちにすることは法に従っているとし、敵のすることは同じ物にもかかわらず法には従わないとするのは、法の正義にもとる行為でしょう。
西側の報道にはブダペスト覚書に反するという話は出てくるのですが、コソボの話はほとんど出てこないのです。まるで報道自主規制みたいです。プーチン大統領の演説には当然この部分は出てきますが、西側の報道にはほとんど載らないようなのです。
これでは西側の方が戦争をあおっているとさえ見える状況です。これが普通に接する私達の報道の内容なのです。
では、何が正しいのでしょうか。結局国際法に違反してもその違反を正す強制力は、最後は軍事力しかなくなります。もちろん関係する多くの人々の理解を得る必要があるので、ここに法の正義が重要な事は言うまでもないと思います。
西側ではイラク戦争に見るようにこの点が経済的利益などでかき消され、東側では力関係によって動くことになるのかも知れません。法の正義を語るならばこの正義を普遍的に守ることもまた、非常に大切でしょう。ロシアにも守れない約束がありますが、プーチン大統領の戦争における正義は守られて来ていると思います。
ロシアの西側に対する不信感は、カラー革命により騙されてきたことや、旧ソ連の崩壊後ロシアの国債をデフォルトに追い込み、ロシアの国益を不当に流出させてきていることなどでしょう。西側の守らない約束もたくさんあるとロシアでは言われていますが、プロパガンダの力の差でロシアが悪く言われている部分が多くあるようです。
オバマ大統領は米国の内部で戦争を望む勢力とそうでない勢力との争いを展開していますが、ロシアではどうなっているのでしょうか。
ロシアの内部には西側の資本が入り込んで自分に都合の良い政策の展開を目指している部分があると思いますが、プーチン大統領の政策に押されてそれほど活動できているようには見えません。財閥もプーチン大統領に協力しないと西側との競争にならないので、この点での協調はそこそこうまく言っているのではないでしょうか。
ロシアの経済規模は小さくGDPでは米国に歯が立たないので、当然ながら軍事上の戦力にも大きな差が出ています。これはある意味では当然ですが、米国がドルという基軸通貨の力を使って無理をした経済運営をしていることは既に明らかな現実だと思います。
米国は現実に大きな負債を作り上げ、11式の空母打撃群を抱えています。この運用資金はどこから出てくるのでしょうか。核ミサイルなどの維持にも費用はかかるのです。
ロシアからすれば、米国の経済的な異変や崩壊が米国の軍事力を維持するための方策に使われる事を恐れていると思います。印刷するだけで使える基軸通貨の力を再び構築されるのは、経済の利益を求めているロシアにとっては受け入れにくいでしょう。働いた結果としてのロシアの通貨の価値が、印刷した紙によって吸い上げられることになるのです。
説明が分かりにくいかも知れませんが、プーチン大統領にとっては米国の金庫が既に破産しかかっているので、この破産が明らかになるときに備える必要があるのです。米国の維持できない戦力はソ連崩壊時のように失われるべきですが、この力を失いたくないのは人情という物でしょう。一部の人が戦争を求めることにつながっています。
西側の報道は起きた事をそのまま伝える部分もありますが、この様なときには強力なプロパガンダ機関となり、新しい基軸通貨を求める世論の形成に役立つことになるでしょう。情報の正しさや、米国の抱えていた負債の原因や問題などは過小評価し、新しいシステムのメリットのみをアピールすることになるでしょう。ここでは誰もが力を望むのです。
これらは今の報道の姿勢から簡単に想像できる未来でしょう。
現実の世界に目を向けると、他にも戦争を望む勢力があります。日本の一部と中国の政権、イスラエルなども一部がまだ戦争を望んでイスラム勢力に紛争を仕掛けています。
ロシアは中国と広い国境で接しており、極東では特に中国の進出に注意をしています。
経済を通してロシアと中国の関係を見ると、ガスのパイプラインも広がってゆくでしょうし、EUとの貿易に使われている鉄道網も大きな役割を果たし始めています。
オランダの核サミットの関連で、中国の習近平氏がドイツのメルケル首相と並んでいる物がありました。習氏は南京大虐殺を引き合いに出して日本の姿勢を批判しており、メルケル首相のあきれる顔が印象的に見えていました。
韓国と中国で日本を悪者に仕立てる協力をしているようですが、これでは第2次大戦前と変わらないプロパガンダ合戦になってしまいます。
この意味ではメルケル首相も戦争など望んでいないでしょう。様々なコメントを見ていてもこの問題を避けるようにしていると感じています。
ドイツとロシアはつながりが強く、この面でも協力関係があるかもしれません。日本と中国の戦争に巻き込まれないことと、経済的な利益を守ることです。鉄道を利用した経済的結びつきを求め、中国の国内の混乱から共産党政権に求められている外部との紛争や戦争を国益の観点から注意深く冷静に見ていると思います。中国の分裂か戦争による漁夫の利は視界に入っているでしょう。
3月の落ち込み以降ロシアの通貨と株価はある程度回復してきていますが、グラフによればこの先も大きく落ち込むことはないと思います。5月のウクライナの大統領選挙後の6月に動きがあるかもしれません。ロシアが戦争を望む姿勢は感じられませんでした。
自制しながらアジアの情勢を見守っている感じを受けています。今の中韓の動きはテロへの心配を感じさせる物なので、流れの変わる出来事が起きてくるかも知れません。
稲生雅之