ウクライナの情勢について       3月3日

 オリンピック期間中を狙った政変がウクライナで起き、国家分裂の様相を強めてきています。首都キエフでの抗議行動における死傷者の数の広がりから、ヤヌコビッチ大統領がロシアに逃れる事態となり、EUとの協力を推進したいウクライナ北西部の人々の政権が暫定的に樹立されています。

 ロシアはオリンピック期間中でもあり、この抗議行動に対する支援を自制していたのかも知れません。ヤヌコビッチ氏の死者を増やしてしまった対策の進め方にも問題があって、この事態を招いたのでしょう。ただ、ロシアも事態を静観するのみではなく、自国とロシア民族の利益を守る準備は進めていたようです。
 クリミア半島の自治政府の要請を受けてウクライナに協力する体裁を整えて、必要な行動をこれから始めるところのようです。

 米国は軍事力を行使しないと伝えており、今年のG8のボイコットや政治経済的な圧力が加わる形となり、いわゆる東西の武力衝突の可能性は今のところ避けられています。
 実際にはこれから色んな行動が起こされて、紛争として広がりを見せてゆく事になると思います。3月に紛争が起きる事を予想していましたが、このウクライナの紛争を表していたとは分かりませんでした。

 ロシアについても解析していましたが、今進めている中期の予想からは時間的な都合でロシアCIS周辺国の解析を外していました。今回ウクライナの政変を受けてこの部分の解析を追加して行ってみました。
 すると、現在の未来を表す条件でロシアCIS周辺国の解析においては、2月に分裂と紛争がピークを持っていました。世界全体の解析では3月に紛争のピークを持つことに変わりはありません。

 今までピークを見つけると、その時点でその言葉の状況が現れる物だと思っていましたが、今回の事態は紛争という出来事にはそれなりの前兆を伴うことを教えてくれています。グラフを見てゆく経験がまだ足りないので、その意味している物を正しく読み取れていなかったのでしょう。

 考えてみると昨年7月の中国人民銀行の救済も、6月には既に上海銀行間市場において救済措置が取られており、この危機の本格化した物が7月でした。この意味での今回の紛争というピークは、しばらく続いてきていたウクライナの抗議行動が前兆であり、3月にこれから本格化するのは、ウクライナ内部における、北西部のEU推進派と南東部ロシア派との争いかも知れません。

 当然事態は複雑になる部分を持っていると思います。ウクライナは破産寸前ですからIMFによる救済も視野に入っているでしょうし、燃料の天然ガスもロシアから購入し続けないといけません。
 ウクライナのクリミア半島にはロシアの海軍基地があり、この基地の使用料が天然ガスの代金になっていたのです。この代金はウクライナが分裂すると北西部のエリアには支払われなくなり、財政的にも厳しさを増すことになるでしょう。

 EU推進派がタイミングとして政府を倒すには良かったと思いますが、その後の展開に明るさが見えないのです。アラブの春もほとんど内乱につながってしまい、利権争いに明け暮れていたり、宗教の紛争を招いてしまうのです。
 もともとEUが十分な支援をしなかったことがヤヌコビッチ氏をロシアにつかせた部分もあるはずなのに、この先EUはきちんとウクライナを支援できるのでしょうか。

 少し離れた場所にあるサラエボでも2月に政府への抗議行動が燃え上がり、政府のビルが焼き討ちに遭っています。政府の腐敗により仕事がなくなっていることやその腐敗が経済を停滞させるので、給料を支払われない人々の不満が爆発したのです。
 EUは今回の政変により樹立された政権をどこまで支えるのでしょうか。彼らに可能な資金援助には限りがあるでしょう。

 グラフからこの先を読み解くのはまだ難しいのですが、ウクライナのグラフで見ると、この紛争は数ヶ月続くのかも知れません。5月に大統領選挙を実施するのであれば、その前後でも大きく事態が動くかも知れません。
 単純に考えると、ウクライナは内戦を戦うよりも、北西部と南東部に分裂する方がすっきりすると思います。南東部は今後もロシアに基地を貸し出す収入から天然ガスを購入し、ロシアとの経済的つながりの中で今まで同様に経済を維持できるでしょう。アラブの春のような混乱はこのエリアでは避けられるのです。

 これに対して北西部にはEUの支援を望む声が上がるだけで、お金儲けにつながらない支援がどこまで行われるのか、今の時点では疑問に感じています。暫定政権は選挙により消えてゆくと思いますが、その後の政権もはたして地域を安定させられるのか、今はまだ分からないと思います。現状はただ混乱を望んだ少数の人々の利益になっているだけなのです。北西部は混乱を広げるように追い込まれて行き、最後は破産し自滅させられる可能性の方が高いのです。悪い人たちが計画上無理している部分でもあるでしょう。

 ウクライナにはEU向けのパイプラインが存在しており、このガスがEU諸国には重要になっています。このパイプラインを人質にする位しか戦略はないのではないかと思います。これを利用してもあまり優位に立てないことは、これまでのガス紛争の例が示しています。世界が認めたのは、信頼できないのはロシアではなくウクライナだと言うことです。
 それでもここに手を出しEUを混乱させることで、自分達の力を誇示することにはなるかも知れません。これは結果としてはうまく行かないでしょう。時間が必要にしてもロシアのドイツ向けなどの迂回パイプラインが代換することにつながるだけだからです。

 混乱を願って事態を動かした人々には、まだ続きがあると思っています。ウクライナにロシアを引き込んだところで、チェチェンのゲリラを装ったイスラム勢力の攻撃を向かわせるのです。シリアのアルカイダのような戦いです。
 いまのウクライナでシリアの様に戦うことは出来ないと思いますが、ゲリラを装うテロには対策が必要であり、紛争を封じ込める上でも重要なことになるでしょう。3月の紛争は可能性が高いですが、テロとしてはそれほどでもないので、起きないことを願っています。

 世界に混乱を望むのであれば、混乱はヨーロッパだけでなくアジアや他の地区でも追求される可能性があると思います。戦争を望む悪い人たちも事態を動かすべく攻勢に出ているのかも知れません。同時に2カ所以上での混乱を起こすことにより、防衛側への負担と混乱を求めているのでしょう。

 中国の昆明では、刃物を持った集団により29人が死亡、140人以上が負傷する事件が起きています。事件は中国政府によってウイグル独立勢力による犯行であると断定されています。
 この事件は5日から始まる中国の国会に向けた物であり、昨年も政治イベントの前に起こされている物です。習近平氏のメンツを2回続けてつぶしているのです。悪い人たちはウクライナの政変をこのタイミングに合わせたのです。緊張は高まっていると思います。

 中国では国会が終わるのに9日位必要とのことなので、その後事態がどの様に動くのか、注意が必要になります。中国側の報復と言うよりも、分離独立を願う勢力の中国政府に向けたさらなるテロにも可能性はありますし、政権は尖閣などの外部にも出てくるかも知れません。
 中国の周辺国でも、紛争や混乱を狙ったテロや事件が起きやすくなっていると思います。紛争につながりかねない物です。

 アジアの情勢については今まだ解析の途中です。経済への混乱も同時に求めているはずなので、この点にも注意しています。2月はバブルでしたが、3月の株としての注目は転換点になるかも知れないと言うことだと感じ始めています。
 今はロシアの株や通貨に影響が出ているレベルと思いますが、事態の進展によりEU経済にも打撃が出るように動いてゆくのではないかと思います。

 その続きとしてアジアでの打撃にもつなぎたい物と思いますが、911の様なテロが起こされない限り、まだそこまで進展する状況にはなさそうだと考えています。
 この意味で一気に経済をおかしくするのは難しいようです。5~6月に向けて下げて行き、その後回復してまた9~10月に追い込もうとしている感じです。
 善悪入り乱れての攻防という感じですが、起きてくる事態に扇動されないことが大切になります。この中にあって、悪い人たちは無理をしているようです。

稲生雅之