QE3縮小の開始について     12月25日

 FRBは12月の連邦公開市場委員会(FOMC)により、1月からのQE3縮小を決定し、月額100億ドルの縮小を開始するとのことです。
 過去においてはQE3の縮小に言及するだけで株価が大きく下がる状況でしたが、今回は株価は上昇し、円安にも振れています。

 FRBの購入する土地債券が50億ドル、米国債が50億ドルも買い手がつかなくなるのですが、市場がこれを考えても大丈夫なレベルに景気が回復しているようです。
 実際にFRBが市場に投入するこの種の資金が世界の株価を上昇させて、新興市場では混乱を招いてもいました。バーナンキ議長の縮小への警告から半年過ぎていますので、この意味では準備完了であり縮小を歓迎することは一応理解出来る反応です。

 10月にはQE3を縮小できるレベルにあったと思っていますが、この時は政府の財政が心配とのことで、縮小開始は見送られています。
 今回のFOMC後の声明では政府の財政リスクが小さくなったと明確に説明されています。景気も順調に回復する指標が出ているので、今ならQE3縮小を開始できると判断したのでしょう。
 市場はこの判断を受け入れて、市場を買い上がる方向への反応を示したようです。

 退任を控えたバーナンキ議長のQE3縮小への強い意志と、米国財政の一時的な改善がこの状況を作り出していると思います。ルー財務長官の働きの結果でもあるでしょう。
 米国の国債の長期金利は3%に届くところです。日本の長期金利は1%にも満たないところなので、数字としては米国の景気が回復して金利が上がってきているとも言えるでしょう。もちろん金利を上げざるを得ないという財政悪化と表裏一体です。
 日本で長期金利が3%なったら財政はもたないのですが、行っている政策は似たような物です。金利がコントロールできなくなる前に止めることと、リスクが顕在化しないことを願うのみです。

 実際に米国の景気が回復しているのか、それともバブルでしかないのか、これから歴史が応えることになるでしょう。少なくともバーナンキ議長は、自分がドルの価値を下げることしか出来なかったと言われることを回避したかったようです。
 FOMCはこの先QE3の完全終了までに縮小幅を一時的に小さくしたり大きくするなど、経済指標に合わせて運営すると市場に説明しています。
 実際にこのまま景気が回復し、QE3の終止に持ち込めるか、来年の景気が決めることになるようです。

 直前の個人的な予想ではQE3の縮小はないとみていましたが、グラフの予想である12月の可能性は正しかったようです。縮小が始まると一時的に景気は悪化するとみていましたが、この部分は今のところ外れており、市場の反応は好評でした。
 もちろんこの先にはまだ様々な変化が待っています。実際に1月の縮小の世界への影響を待つ必要がありますが、もう少しの間市場には大きな変化は起きないかも知れません。

 10月の市場の閉鎖と、今回のQE3の縮小の開始を条件にして、日本の状況と米国の状況を調べてみました。
 その結果ですが、12月と2月にバブルが見られています。1月に少し影響が出ても持ち直すのでしょう。米国の財政問題が再燃するか中国の問題が表面化するまでは、しばらく大丈夫に見えています。

 2014年4月以降の日本の消費税の影響ですが、グラフにはアベノミクスの落ち込みが明らかに出ています。米国市場も同様で、日本の影響は世界に及ぶことになるようです。
 経済のリスクはその後5、6月と高まる形になり、ここを凌ぐとその次は秋まで延びてゆく感じです。

 現在2つのグラフを見ながら考えています。ここでの未来の重なりは大きな物ではなく、リスクの高い時期が1ヶ月ずれているなどの状況で、グラフの多くが重なる物になるかこれからの評価次第です。現状の重なりは大きくないので、リスクはあるも今の状況からバブルがはがれ落ちる程度で進んでゆけるのではないかと思います。

 政治と経済という視点で見ると、2014年には中国の混乱が広がる予想があります。広い国では混乱が中央から地方に伝わるにも時間がある程度必要だと思います。加えて経済の悪化はリーマンショックに見るように、その始まりからピークに達するまでに年単位の時間が必要になります。中国の問題は今年の夏頃から顕在化していますので、ピークに届くのにはもう少し時間がかかるかも知れません。2015年以降になるのか評価が必要です。

 一方の日本と米国ですが、それぞれが財政政策の果実をまず手にしており、今は何とか回転している状況です。負債のツケが回るのはまだ先です。
 日本はこれから4月の消費税増税を迎えて大きな変化を起こさずに進めるかを問われることになる状況です。今のバブルが消えるだけで済めば良いと思います。それ以上に市場を悪化させる理由を作り出さなくても良いと思いますので、政府がうまく立ち回ればバブルが消えるだけで対応できるでしょう。

 米国は財政問題をどこまで先送りできるかが本来の問題です。ここに中国の問題が表面化してくるので、米国としては自国の財政問題と厳しく向き合うことなく、中国の問題を処理する中に活路を見いだしてゆく流れに乗ろうとするでしょう。
 戦争を起こさなくても、これから起きてくる中国の変化に適切に対処する事により、自国の経済を活性化できる状況を作り出せると思います。

 中国の経済が混乱してくることに合わせて戦争へのリスクは小さくならず、経済問題と隣り合わせで進んでゆく事になると思います。
 戦争を望む勢力もがんばるところでしょう。戦争が起きざるを得ない状況にはまだ道のりがあります。起こす必要のない戦争へと扇動させることのないように願っています。

稲生雅之