日本の財政と国債について   10月29日

 今年の4月から実施されている日銀の異次元緩和政策により、日本の国債の状況が大きく変化しています。これまでは平時において日銀が国債を大量購入することはありませんでした。2年でインフレ率を2%に押し上げるために、国債を買い上げて市場に現金をあふれさせる政策を実施するためです。

 この政策は半年を過ぎています。円安が進んだために電気代やガソリンに代表される輸入品の価格が上昇した分インフレが進んでくる状況があるのですが、他の関連の物品はむしろデフレ気味であり、インフレ率に関してはうまくいっていない状況にあります。2%にはほど遠いのが現状です。国民はこの政策にそっぽを向き、はやし立てるのはマスコミと株価を上げて利益を得ている外資という感じです。

 これに対して、経済指標には期待インフレ率という物があり、将来のインフレ率を予想する物になっています。日本ではあまり使われない物なのですが、大体1年先のインフレを予想する物と言われています。
 この数値は現在1.4%位になります。4月に異次元緩和が始まったときには2%まで上昇しましたが、その後は1~1.5%程度になっています。この先は現在のインフレ率に輸入品の物価上昇が加わるので、数値としてはさらに上昇することが予想されています。

 インフレが進むと、これに合わせて金利も上昇します。これは経済の仕組みです。
 日本には大量の国債が発行されており、その残高はもうすぐ1千兆円になるところです。この残高の内の約9割が国内で保有されており、残りが海外所有になっています。
 9割までも国債を購入出来たのは、購入する原資があるからです。私たちの貯金や企業の持つ資金が銀行の貯金になってこの役割を果たしてきました。この中には、長年にわたって日本が生み出してきていた貿易の黒字も含まれているのです。金融の黒字も含めた経常収支が黒字であることが大きく影響していたのでした。

 少し前までの円高の影響と景気の後退により、西暦2011年以降は貿易赤字が定着しています。金融収支はまだ黒字ですが、円安がさらに進展すると今のペースではあと数年で経常収支が赤字になることが予想出来る状況になっています。原子力発電所の停止による火力発電用天然ガスの輸入量が増えたことが主な理由です。

 この天然ガスの購入は石油価格に連動しており、円安も加わって金額が膨らんでいるのです。ほぼ世界一の輸入量にもかかわらず、他国の約2倍の金額で購入するなど貿易赤字を膨らませているのです。この先原子力発電の安さをアピールするためなのかも知れません。アベノミクスで経済を刺激しながら、一方では大金を無駄遣いする愚かな政策です。
民主党時代の物ですが、一般的に言えば外資に対する巨額のあからさまな利益供与であり、キックバックも含めた背信行為がなかったかを後世の政治家が調べる事になるかも知れません。

 日本では毎年約40兆円もの国債が増えて行くのです。この資金が順調に準備出来ている間は心配なかったのですが、ここに来ていよいよ日本にも資金の枯渇する状況が予想出来るところに来ているのです。今のままならあと数年の様です。
 その時には原子力発電所を未来においてどうするかも問われることになるようです。

 金利が上昇すると国債の金利の負担が大きくなり、今年間10兆円位しか負担していない国債の利払い費が大きく上昇してきます。加えて民間企業の保有する国債には金利上昇部分が国債の価値を減額するので、含み損を抱えることになります。もちろんこの含み損を増えるままに抱えているわけにはいかないので、いずれ売却せざるを得ないところに追い込まれるのです。

 この金利の上昇は、2%のインフレを起こそうとするところから起きてくる物です。政府日銀は金利を上昇させずにインフレ率だけ2%上げたいのですが、こんな曲芸のようなことは出来ないと市場に迫られているのです。ある程度は過去の談合の延長上で対処出来るのですが、会社が倒産するまで不良債券を抱えていることは私企業には出来ないのです。

 アメリカの金利もこれまで低く抑えられていたのですが、FRBのバーナンキ議長がQE3の出口戦略に触れたところから、米国債の長期金利は2.5%を超えるところまで、1%近く上昇したのでした。
 この意味では、期待インフレ率が2%になったときに日本の国債の金利がどうなるか、非常に心配な状況が既に起きてきているのです。国債の金利上昇を抑えられるかが市場に試される状況になるのです。

この先に起きてくることの心配なのですが、コードの解析によれば、何かの危機が12月に経済を悪化させる可能性が高まるのです。この時に日本の国債価格が低下し、EUとアメリカの国債価格が上昇する可能性があるのです。QE3の縮小の開始もあるのですが、国債価格の動きには日本国債への売り崩しの動きが感じられるのです。

 海外には日本国債を売り崩して巨額の利益を上げようとしているところがあります。彼らは約10%分の持ち分を使って先物売りを仕掛けてくることになるでしょう。これまでには何度も防いで来た売り崩しですが、金額は増えて影響も大きくなってきているのです。一度売り崩した後に格付けも利用してさらに売るのかも知れません。
 国債価格は一時的に値を下げても、売りの数量の問題で最終的にはまだ問題なく持ちこたえられると思います。

 日本国債に対応して日本政府には大きな資産があるので、これを効果的に使えばまだ少し余裕があります。ただ、資金を負担出来るのですが資産を売却することになるので、利害関係の調整も含めて政治的に簡単にできる物ではないのです。
 この問題に向き合わないと数年で日本の国債が国内で消化出来なくなるのです。今でも政府にとって毎年40兆円もの国債の消化は大きな負担であり、アベノミクスとしての日銀の国債購入も、ある意味では政府が追い込まれて行っている部分があるかもしれないほどなのです。

 もし今の状態から金利が1%上昇しただけでも情勢は大きく変わってしまいます。国内の保有者には大きな含み損が発生し、政府には金利負担の倍増という維持出来ないレベルになるのです。2%のインフレを目指す政策は取りやめになり、金利を元に戻すための救済策が行われることになるでしょう。

 国債発行が増えている主な理由は、日本の年金・社会保険料が不足していることです。今の保険料では不足するどころか将来破綻してしまうので、抜本的な見直しが必要なのです。これまでの政権にはこれを処理する政治力がなかったためにこの状況が起きているのです。政府に資産のある内に対策を行わないと、子供達の将来を大人が奪ってしまうことになりかねない状況であるのです。

 隣の中国では、リーマンショックに際して4兆元もの資金を拠出し、経済を悪化させないように刺激策を取りました。その結果は残念なことに不良債権の山を作り出すことになっており、今その負債の増加に苦しんでいるのです。
政権はその時を繕うことが出来た様ですが将来に大きな問題を残したのです。ここまでの未来を考えた温家宝首相の政策ではなかったと言うことなのです。

 一方のアメリカはQE1,2,3の政策を打ち出しFRBの資産を4倍に膨らませる中で、リスクを抱えながらも何とか景気を回復につなげるところまで来ているのです。この先の政策で彼らの未来が作られて行く事になるでしょう。
 膨らむ負債とインフレによりアメリカの将来は厳しい物になる可能性の方が高いです。その解決のために、大企業が国民を食い物にするがごとき状況が変化する可能性が高まって来ています。現在の政治的混乱の中にはこの流れを感じています。オバマ大統領がチェンジするのですが、これに困る人々は今戦争を望んでいます。

 日本はこの間政治の混乱もあって、効果的な対策もなければ、膨らみ行く国債残高をさらに積み増すことしか出来ませんでした。この間に日本の経済の体質が変化してきており、国債を消化する余力が失われるところまで来てしまっているのです。
 アベノミクスはこの現状を直視せず、日銀の国債大量購入で今を取り繕う物でしかないのです。財政の面から日本の政治経済の方向性が大きく変化するところに近づいている様です。

 11月になると株価安定策として行われてきた空売り規制が緩和されるので、その後の株価は今まで以上に不安定化すると思います。
 12月に国債売りを仕掛けられても、一時的な影響のみで跳ね返せると思います。戦争を望む人たちはこれを利用して他にも何かするのだと思います。今のところ明らかなリスクはQE3の縮小との組み合わせであり、これも市場はある程度備えているはずです。
日本の場合原発へのテロや尖閣での紛争が困るのですが、その可能性は排除出来ません。4月のボストンテロに続いて8月にはアルカイダのテロも続きました。これらは戦争に向けた動きだと思っています。シリアの空爆に失敗した事もあり、日本でも注意が必要です。

この場合に予想される株価を大きく下げてからの大きな円安は、国民を不安にするでしょう。海外のファンドにとってこのそれぞれは理由があれば出来る事です。例えば今までになかった国債価格の不安定化が国債の格下げを呼び、さらに大きな円安を引き起こすという流れです。

この時点で政府に円安の引き起こす財政的な問題を明らかにされると、危機に対応する責任ある政府として国民を望む方向に動かしやすいでしょう。テロや紛争が起こされれば戦争の準備へ、そして意図して大きく膨らませた天然ガスによる貿易赤字の削減のため、原子力発電所は再稼働と武装へと言う流れです。彼らの演出に扇動されてしまうのです。

政府は来年8%に消費税を上げるのですが、実体経済が上向いていないことは承知の上でこの判断です。むしろ経済の悪化から財政問題を表面化させて上記の政策を実施してゆく事を、始めから狙っていると思えるほどです。やはりアベノミクスはただの釣り餌なのでしょう。国民が騙されないようにしないといけない状況です。
この時期を大きな落ち込みにならずに凌いで行ければ良いと思います。今週のHPと来週のHPは自由にコピーして広めて頂ければと思います。来週はその先に待つ未来の予想をお送りしたいと思います。

稲生雅之