多くの国々の関係する中東の戦争ですが、イスラエルとイランの核を巡る争いであり、イスラエルとパレスチナの領土を巡る争いでもあると思います。
今国際情勢としては、エジプトの政権が倒れ混乱が起きていること、シリアに対して2度目の化学兵器の使用を国連の安保理が取り上げる事態になっています。
エジプトの前政権はムスリム同胞団という組織がベースにあるイスラム宗教色の強い政権でした。選挙を通して民主的に政権を勝ち取っていましたが、その後の宗教への傾倒が国民の支持を失って今に至るという説明が一般にはなされていると思っています。
国民の選択であれば仕方のないことですが、実際には何が起きているのか、もう少し時間がたって内部の様子が見えてこないと情勢が分からないです。
西側の国々にとってはアメリカよりだった政権が、民主的にイスラム化したことは脅威に映ったのではないかと思います。貧しさと腐敗のあるところに宗教が救いの道を示して政治的な力を勝ち取ってゆくのであって、人々の苦しみが宗教を超えた民主的な力を持って行く物ではないという地域の現実があったと思います。
エジプトの人々が、今回の政変をどの様に受け入れるのか、ムスリム同胞団との内乱になるのか、まだ分からないと感じています。現状はエジプト軍が権力を掌握しているのでしょうが、この先の政治的な動きがよく分からないからです。
国境を接しているイスラエルには目を離せない出来事だと思います。
シリアはイスラエルと国境を接する国で、今アラブの春の延長上で、内乱になっています。この内乱はシリアの政権であるシーア派(アラウィー派)と、これに反対するスンニ派の争いにされていると思います。資金はスンニ派の国々が負担して武器をシリアに供給し、メディアも情報操作に使って内乱を進めています。
化学兵器の使用が以前にも取り上げられ、アメリカはその使用を認めるなどのシリア制裁への動きがあったのですが、結局シリアを非難するだけで、軍事的には大きな動きにはなりませんでした。反政府側の起こしたやらせであるとロシアは非難し、実際の証拠にも乏しい状況だったからです。
今回は以前よりもたくさんの数の人が化学兵器でなくなったとされていますが、反政府側が攻撃を受けたと言うだけで、結局どちらが使ったのかは明確にはなりません。これからこの議論が出てくると思いますが、紛争地帯でこの種の証拠集めなどすぐに出来るはずもなく、非難合戦が続くのでしょう。
シリアはイスラエルとの間にある大きな軍事力の差を埋めるために、化学兵器を所持しています。北朝鮮が核兵器を持つこととは少し異なるのですが、イスラエルの攻撃に対する抑止力にはなっていたと思います。
イスラエルの核兵器とシリアの化学兵器は、互いの抑止力という意味では不均衡ながらも対峙していたことになると思います。
今回の内乱ではこの化学兵器が持ち出されたことになっています。一度目の時には使われた規模が小さくて、国際社会から大きく起きてくる批判に対して、シリア政府が化学兵器を利用するメリットがないという批判がなされていました。
今回はこの批判に答える形に被害規模が広がったという演出がなされています。
それまでの情勢としては、数ヶ月前からシリア政府軍の方が優勢になっており、化学兵器を使わねばならない理由はなかったと思います。
こういった流れの中で少し前に米ロ首脳会談の中止が演出されています。これはロシアのプーチン大統領がシリアを守る姿勢を明確にしていることだけではなく、機密暴露事件のスノーデン氏の亡命騒ぎも関係しており、両国の関係の悪化を示していることには疑いがなさそうです。
イランには核開発問題という物があって、核開発を進めながら自国の防衛という物を追求していると思います。もしイスラエルとアメリカと戦争になれば、イラクのようにすぐに負けることになりかねない状況だからです。
シリアは核兵器を持つには資金も時間もかかるので、安くすむ化学兵器を選択し、実際にこれをある程度抑止力にできていたと思います。
これに対してイランは核兵器を持つ選択をしたと思われます。北朝鮮が持っていますし、持ってしまえば、その後の情勢を有利に出来ると考えているのだと思います。
これに対してイスラエルは核兵器の所持を自国の安全のために止める理由があり、どうしてもこの開発を阻止したいのだと思われます。
もしイスラエルがイランの核施設を爆撃すると何が起きるでしょうか。イスラム諸国の反発を招きガザ地区からのミサイル攻撃と、レバノンのヒズボラによるミサイル攻撃が起きるかも知れません。起きると分かっている以上はこれを止める必要があります。
この意味で見ると、エジプトのムスリム同胞団の政権が倒れたことには幸運があるのかもしれません。とにかく実際に何が起きていたかは後で分かってくるでしょう。西側の関与も明らかにされるかも知れません。
レバノンのヒズボラの攻撃を止めるには、背後に存在し具体的な武器や資金を地続きに援助するシリアとイランを何とかする必要が出てきます。
この意味で考えると、2度までも化学兵器の話を出してくる部分にはシリアを何とかして動けなくし、イスラエルのイラン爆撃を可能にする条件作りに見えるのです。
まだ大きな戦争になる流れが出ているわけではないと思いますが、イスラエルが自国の防衛に関して焦っている状況であることは間違いないと思います。イランの核施設を爆撃するための準備を進めているように見えています。ヨーロッパにおけるテロの情報が増えていることも、関連する批判をそらす意図があるのかもしれないと思えます。
核兵器に頼っても、イスラエルは自国の安全を守れないと分かってきていると思います。イランも核兵器を作り出しても、これをイスラエルに発射する理由は現実的には乏しいはずです。宗教を利用してこれを可能にする流れはあるかも知れませんが、イスラエルを核攻撃してもその後の報復など見合った現実的な利益はないと思います。
戦争に対する抑止力があれば良いのでしょう。
説明が長くなりましたが、中東の大戦争は国益にも、政治的にもあまり意味のない物になっていると思います。起きる場合は宗教の争いを演出して不毛な戦いをすることになるので、そのきっかけはテロなどと組み合わせた卑怯な物になると思います。宗教的な暴発を誘うのでしょう。
目的は過去の戦争の様に石油の利権を得るとかではなく、混乱により経済的な利益を得ることです。この利益は再三お伝えしているアメリカやイギリスなどの様に負債を自国に有利な形で非常に小さな物に変えてしまうことだと思われます。経済の問題を抱える国が問題を有利に解決したいのです。
過去の長い戦争は経済に利益を生んできましたが、現在の戦争は国民には嫌われており、経済規模の面でも一部軍需産業にプラスなだけで、国全体としてはメリットの少ない物になってきています。経済の統計に見る歴史の流れです。
この意味でも本当に一部の人が自分の利益を求める形になっています。大きな戦争は国民の支持の得られない物なので、起こすことも難しくなっているようです。
それでも戦争へのリスクはあります。やはり力のある一部の人ですので、様々な演出は今後も続くでしょう。今調べた来年の9月までで見ると、まだ本格的な戦争には準備が必要な感じです。
中東戦争について
・イスラエル、アメリカ、イランの一部の人々が戦いを望んでいるが、国民も軍もそれを望んでいるようには見えない。関係国政府も望んでいないと思われる。
・各国政府は、経済の状況に合わせてこの冬にテロなどの危機を起こすかも知れない。その後は来年の後半以降に紛争に可能性が出てくる。経済の大きな変化に合わせて演出される可能性が高い。
・もし起きるなら、本格的な戦争はそのもう少し先になると思われる。
稲生雅之