安倍首相のTPP            4月15日

 TPPへの交渉参加が決まったようなニュースが流れています。アメリカの議会の批准など手続きは残っているも、日本側としては交渉参加を決めたと言うことのようです。
 関税の撤廃の例外など本当に約束が守られて、日本の農業を始めとする守りたい物、保険の仕組みや知財の仕組み、訴訟の仕組みは守られるのでしょうか。

 大手の新聞は経済成長が促進されるだの、市場が広がるなど調子の良いことを言っています。こういう場合には、アメリカの都合の悪いことを言うところはなくなってしまうので、何とも情けないですが事実を報道しないメディアの姿が見えてきます。
 この先がどうなって行くのかを見て行きたいと思っていますが、現状はまだ情報の分析段階です。それでもTPPに関しては、不思議というか、おかしな状況があるので、その点について説明したいと思います。

 まずはTPP交渉の現実面です。
 以下は元農水大臣の山田正彦氏のブログからの一部抜粋です。4月8日の物です。
 米国通商代表部のバーバラ・ワイゼル主席交渉官は次のように述べている。私が大切だと思われるところ抜粋する。
「TPP参加国は、これまで達成した非常に多くの交渉問題に対する意見の一致に基づき、本会合において11か国の代表は残存する問題について相互に受け入れ可能な道筋を見つけ、合意の法文化を進める動きを進展させた。

 その結果、関税、通信、投資サービス貿易技術的障害、衛星や植物検疫の手法、知的財産、規制の統一、開発やその他の問題など多岐にわたる領域において多くの問題に対する解決を見出すことに成功した。(たしかに、直後のロリー・ワラックさん…の話ではすでに29章900ページに及ぶものが出来上がっていて、日本は参加にあたってそれを読むことも、できないとされていた)

 この進展をもって、関税、通信、規制の統一、開発を含むいくつかの交渉グループは今後の会合で法的文書に関して再度集まっての議論は行われず、これらの分野においては残った課題は合意がファイナルとなる最終ステージ(10月とされている)で取り上げられることになる」
となっている。

 聖域が認めなければ交渉から撤退してもいいなどと安倍、自民党政権は述べているが、5品目の関税についても例外が認められるどころか、これでは9月の会合では議論する余地もなく、10月の最終交渉で署名させられるだけになってしまう。
 日本は29章900ページに一言も訂正も追加もできず、だからと言って後から参加したカナダ、メキシコ、日本には拒否権、撤退も認められていない。
 抜粋ここまで。

 日本は参加したらサインするだけで、関税などの日本にとって重要な部分は議論にもならず、今までの合意を飲むだけなのです。
 安倍首相は日米同盟に必要なので、TPPに参加することで、アメリカを支える中で日本の利益を守って行きたいとでも言うのでしょうか。自民党が国民に約束した撤退は反故にされるのでしょう。少なくとも日本の交渉力で覆る物ではないようです。

 TPPは日本の国益を著しく損ないます。以後日本がアメリカの法律で動くような物で、資本の強欲が目に見えて表れるようになります。医療保険などアメリカのように機能しなくなるのです。お金持ちだけが利益にあずかる世界であり、国民の大半は利益を失います。
 国民を欺こうとしているくらいですから、安倍首相は目先の自分の利益しか目に映らない状況のようです。

 普通に考えるとアメリカ政府にごり押しされて交渉に参加させられていると言うことになります。でも現実はどうも異なるようで、アメリカの自動車業界や労組からは反対の声も上がっています。オバマ大統領の政策と本当に一致しているのでしょうか。
 現状を調べた結果が以下となります。TPPという言葉にオバマや安倍政権など様々な言葉を組み合わせて、TPP全体の中でのその側面を見てみました。同じ言葉を調べて、その中から強調されて出されている物を強い順番に並べています。

TPPオバマ  持続、欠、協同、永続、安倍総理、ショート、オバマ、食料、戦闘、
        公開、偏向
TPPUS資本 協同、持続的、アナウンスメント、不足、安倍総理、破滅、ショート、
        リリース、偏向、支配
TPP安倍総理 ショート、永続、安倍総理、不足、偏向、利益、食料、破滅
TPP資本安倍 資本、アナウンスメント、安倍、持続、ショート、破滅、欠、偏向、
        公開、協同、永続、公正、利益
(TPPにおける資本と安倍首相の関係を見る物です)
TPP日本メディア 破滅、ショート、不足、永続、利益、安倍総理、欠、崩壊、公開、
          協同、マスター、支配
TPPUS反対 安倍総理、欠、利益、ショート、アナウンスメント、破滅、永続、公開
(TPPにおけるアメリカの反対勢力を見る物です)

 ここでお伝えしたいのは、安倍首相が政策を推進する上で相手にしているのは、どうもオバマ大統領ではなくて、アメリカの一部の資本のようだということです。この資本と組んで、偏向で表される情報操作から利益と支配を求める構図です。オバマ大統領の所にも偏向はあるのですが、数値は他の半分くらいで、利益という言葉も強調されていないのです。
 TPPに反対するアメリカの勢力は安倍首相を良く思っていないと思われ、そのせいで彼の数値が高くなっています。

 政治は簡単に白黒がつく分かりやすいものではないと思います。それでも細かく調べてゆくと複雑な中にも見えてくる物があるようです。
 現実の世界に対比させてみてみます。
 現在のアメリカは1枚岩ではありません。オバマ大統領は財政の崖といわれた債務上限の問題を乗り切る上で、アメリカの国防費を大幅に削減しています。

 アメリカの軍需産業を始めとする勢力は、日本と中国との戦争を望んで様々に仕掛けをしています。今は北朝鮮が日本やアメリカに向けてミサイルを発射し、日米でのミサイル防衛システムの需要を喚起するところです。
 日本は直接の敵国として狙われて、ミサイル防衛システムを購入するように、情報操作がこれからなされるところです。

 アメリカの防衛産業へ流れる資金を減らしたことが、この動きにつながっていると言われており、この動きは現実化しそうな雰囲気です。
 この延長上には安倍首相の尖閣に絡んだ戦争への思惑があり、アベノミクスを通じた政策の誘導で、7月の参議院選挙での勝利とその後の国防関係の強化を狙っています。

 オバマ大統領が本当にこの戦争を望んでいるなら、国防費の大幅削減はなかったのかも知れません。でも実際には削減されています。これがアメリカの国益だからでしょう。
 一方の安倍首相ですが、中国との戦争を望む姿勢であり、アメリカの軍需産業は喜ぶでしょう。でも軍事費を削減することが国益であると考えるオバマ大統領とは一致しない姿勢なのかもしれません。

 明確なことは分からないのですが、この先5月にもアメリカ財政の崖の続きで政治に動きが出てくる可能性があります。この動きの結果で大きくその先が変化するかもしれない状況なのです。
 もしオバマ大統領が中国との戦争を回避したいのであれば、7月の参議院選挙で彼が負けるように仕向けることになります。アメリカ国内での資本との衝突を避けるためには、簡単な方法でこれが行われるのではなく、いかにも彼が愚かな失敗をするという演出を伴うでしょう。アメリカにはこの種の力は本当にあるのです。多くの日本の首相が失脚して来ています。

 戦争を望む物がアメリカの軍需産業と資本だけであれば、国民が戦争を望まないのであれば、こちらになる可能性が少なからずあると思えます。戦争を望む側はその対策として北朝鮮のミサイル発射だけではなく、911のようなテロによる民意の誘導にも可能性があると思います。
 情勢は見てゆくしかないのですが、アメリカの総意が日本にTPP参加を望んでいるというのは幻想です。この先の未来を考える上では、安倍首相の戦争を通じた人気取りが、アメリカに対する大きな現実のリスクになることを考える必要があるのでしょう。

稲生雅之