アベノミクス                2月5日

 現在上手く進んでいるように見えるアベノミクスですが、この先の展開はどのような物になるのでしょうか。
 このまま安定した経済成長につながるならうれしいのですが、どう考えてもその様に進むとは思えません。金融の世界では、日本が「ばば」を引くのが普通のことです。
 どうして今日本にうれしい状況があるのか知りたいところです。この様なことがもっと明確に分かるようになれば、この先の展開も解析しやすくなると思っています。

 アメリカが債務の上限に達して、その政策に苦労しています。5月中頃まで問題を先延ばしすることに成功していますが、その先に目処が立っているわけではありません。
 普通に考えると、日本へは大きな圧力がかかってアメリカ経済を助けるという話になると思うのですが、現状は苦しい日本の円高対策が先行している感じです。
 アメリカはこれで良いと考えているのでしょうか。とてもその様には思えません。

アベノミクス の解析結果
 アベノミクスは、国内資本などの富裕層に向けた物であり、国民、貧困層に向けた物ではない。通貨と貿易を操作し、選挙と政権の維持に向けられた物である。
 一時的安定のあとの混乱、成功よりも失敗であり、信頼は裏切られた思いに変わるかも知れない。
 デフレはインフレに変わるかも知れない。

 安倍首相の口先介入から始まった円安への転換と、関連する株高が現在までの成果です。口先介入でこれだけの成果が出せるのであれば、本当はすばらしいことです。これが日本の首相の実力なら問題ないのですが、現実はそれほど甘くないでしょう。彼の過去の実績が明確に物語ることです。
 困っているアメリカにどのように利益を移転するか、少なくともアメリカの金融資本は今回の円安への動きを事前に織り込んで自分たちの利益にしたはずです。

 この先しばらくこの状況だと思いますが、どこから経済が動くのか、よく分かりません。アメリカ経済の状況、財政的な困窮が政府により明かされれば、そこから事態は大きく動きます。とりあえず5月まで延ばしていますから、その間にさまざまな対策が検討されているように感じています。

 アメリカでは、オバマ大統領の2期目になって政策に変化が現れてきています。軍需産業の利益であったはずのヒラリー国務長官が交代しましたし、イスラエルのネタニヤフ首相とオバマ大統領の関係が明確に悪化しています。イスラエルロビーの限界なのか、それともイスラエル自身の力が低下してきているのか、とにかく注目すべき変化です。

 オバマ大統領の政策で1期目との変化を感じた物は、富裕層への増税です。アメリカでは資本家が物を言う時代が長く、富裕層への増税は実現してきませんでした。ウオール街の人々がアメリカ政府の資金にたかる状況が続いてきていました。
 リーマンショックで数々の金融機関の不正が明らかになったにもかかわらず、彼らは責任を取らずに政府に救済をさせていました。このつけがやっと回ってきた感じです。

 大統領選挙で情勢が変わり、アメリカ政府の破産が現実化しそうなこともあって、人々の不満が富裕層への増税を実現させたのだと思います。
 アメリカでは普通の人々の不満が、政府の政策を変えるところまで来ています。資本家の扇動だけでは上手く行かない部分が出てきているのです。

 現状のアベノミクスは、恐らくですが、アメリカを始めとする様々なグローバルな資本により演出されていると思います。円高から円安と日本の株高へは、政治的な演出に合わせて資本家が動かした物でしょう。実体経済の動きには関係ないと言わんばかりの金融的な動きです。

 簡単に円安と株高にしたのですから、時期が来たら、簡単に反対向きに操作されるでしょう。日本政府や安倍首相にこの操作を止めることや制御する力はほとんどないでしょう。市場の力の前に口先で介入しても、利用価値がなければ相手にされないと言うだけのことです。彼らの利益を求める行動の前に、日本の国益を彼らの利益として差し出すというところが残念な現実になりそうです。また、日銀の政策にはここまでの力はありません。

 海外の資本は、次の変化がどこに現れて為替がどちらに振れるのか、必死になって考えていると思います。普通に考えるともう一度円高に戻し、日本の株も買いたたいて利益を上げて、日本は元の状態に戻ることになるのです。どちらかというと、EUもアメリカも財政的な厳しさを少し公開する事態に追い込まれることで、前よりも厳しい円高になるようにも感じられています。

 いずれ市場から何らかのサインが出てくると思います。今回安倍首相を利用して為替と株を動かした人々は、アメリカでオバマ大統領に力をそがれた資本層の人々ではないかと思います。日本の利益など考えていないでしょう。
 この様な人々に利用されるのも仕方のないところでしょうが、彼らはこの先の混乱から利益を上げて生き残ることを模索しているようです。
 彼らは参議院選挙での自民党の勝利を望んでいるのです。選挙後のさらなる円高を通じて日本経済に打撃を与え、戦争につなぎ利益を求めることが目的でしょう。

 アベノミクスは、日本の国民全体の利益にはつながっていません。本来であれば景気が上向いて多くの人が豊かになるのですが、主に自民党の政策により、利益は株主に還元されて富裕層に流れるのです。派遣労働などを導入し、外資の声を聴く中で、経済の利益は国民には還元されにくくなっているのです。これは既に統計的に明らかな現実です。
 国民のことを考える政権が出来て始めて、この部分にメスを入れることになるでしょう。

稲生雅之