数年前からアメリカでは、石油、天然ガスに変わってシェールガスという資源が本格的に利用され始めています。シェールガスとは地下数kmの深いところにある頁岩(けつがん・シェール)層から採取される天然ガスのことです。
このガスの存在は古くから知られていましたが、岩石と結合していて取り出すことが難しく、普通の天然ガスの様に井戸を掘っただけでは出て来ません。
アメリカは、中東に依存する石油に危機感を持っていたので、自国に広く分布するシェールガスの開発に努力してきました。岩石との結合を高い水圧による掘削と化学物質の添加により解決し、天然ガスを効率よく取り出す技術を確立したのです。
天然ガスの生産では長らくロシアがトップだったと思いますが、2,010年以降はアメリカに取って代わられているとのことです。
アメリカのエネルギー情報局によれば、ロシア、中東などの一部の地域を除いた世界において、取り出して使える資源量が約188兆立方メートル存在するとのことです。2,008年の世界の天然ガス消費量が約3兆立方メートルとのことですので、何十年分もの量が存在することになります。この資源量は今後も開発により増えるでしょう。
このシェールガスの利用によりアメリカの産業が変化するとまで言われています。石油が100ドルへ高騰する中でこの新しいエネルギーの登場なので、中東の石油への依存度が下がるとまで言われています。
イラクの石油を目当てに911以降の戦争が行われたと考えていますが、中東の石油が徐々に必要なくなって行くと、この地域へのアメリカの関与が必要なくなって行くのです。
シェールガス平和 の解析結果
アメリカは石油からシェールガスへの転換が進むことにより、湾岸の石油よりも自国のシェールガスを利用するようになってゆく可能性が高い。湾岸よりも自国であり、戦争よりも平和である。
シェールガスが平和を制御することになるかも知れない。
この解析で2,010年から2,020年までを調べたところ、2,010年から2,016年までが評価が高くて強調を伴っていました。その間開発が大きく進むのでしょう。
自国に存在する資源には紛争、戦争は不要なので、こちらへのシフトは国家の安全保障の観点からしてもどんどん進む物と思います。
イラク戦争ではアメリカは既に戦争を起こした大義名分を失っていますし、本当に多くの人々が亡くなっています。アメリカの撤退でこの地域が不安定になると困ると言うかも知れませんが、それはここにエネルギーの必要性のあった時代の話です。関与する利益がなければ、その場所にアメリカ軍が留まることは必要ないでしょう。
現実に平和につながる動きになると思います。
中東の戦争は、イスラエルとイランが核開発に関連して起こす可能性がある物です。イスラエルには核弾頭が約200発あるとのことですが、これを使えば大きな報復を招くし、これが間違って自国で爆発すると、狭いイスラエルには住む場所がなくなるのです。
イスラエルは本気で戦争をすることを考えている国なので、自国には原子力発電所がありません。原発から原子爆弾を作るのが普通ですが、原発を攻撃されると本当に住む場所がなくなると真剣に考えているのです。日本とは大きな違いであり、日本の政治家には実例としてよく考えて欲しいと思います。これが戦争をする場合の現実なのであり、私たちと同じ人間としてリスクを評価した結果なのです。
ただ、狭い国土故に、周りをすべて敵に囲まれてしまうと、本当に大丈夫かは別の問題です。テロリストがパキスタンの核を盗んで爆発させる事が普通に心配されることであり、イランが核爆弾をイスラエルに発射する理由は、実際上報復以外には乏しいのです。
現実のリスクは敵に囲まれることであり、何かあったときに思いもよらない攻撃を受けることでもあるのです。経済でつながって仲良くできれば平和を維持できるのであり、それに越したことはないでしょう。
そしてアメリカは中東へエネルギーを通じて関与する動機が小さくなって行くのです。イスラエルがアメリカを政治的に動かすにも、その効果は低下せざるを得ないでしょう。
アメリカでは電力などのエネルギーをシェールガスから作り出すことに加えて、自動車にも変化が予想されています。日本のタクシーのように天然ガスで走る方式になるのか、それとも燃料電池式になるのかはまだ分かりません。燃料電池で電力化してモーターを動かすことが効率的にはよいのですが、まだ未完成の技術です。既に日本で完成している天然ガスの車を使う方が手っ取り早いので、こちらになるのかも知れません。
いずれにしても、アメリカにおけるエネルギーのコストが低下することになるので、大きな変化が世界に訪れることになるかも知れません。
この様にエネルギーの変化は、アメリカの経済を活性化出来るし、経済的利益は平和にもつながっています。自国民を石油の確保のために海外で死なせることも必要ないのであって、中東での戦争は急速にその必要性が下がってゆくのです。
経済の発展が戦争への動機を低下させる良い例になると思います。日本も中国を初めアジアの国々に対して経済で平和的な行動が取れると良いと思います。
稲生雅之