中国の権力闘争の結果      11月16日

 中国共産党の全国代表大会が終わり、任期5年の代表者が決まりました。習近平氏の権力継承が決まったのですが、誰が権力を掌握しているのか分かりにくい状況です。
 中央政治局常務委員の9人は7人に減り、このうち4人が江沢民に近く首相になる一人をのぞいて、江沢民の権力の影響が及ぶ状態です。

 胡錦涛氏は、彼の科学的発展観が共産党の党規約に入れられることとなり、江沢民氏や鄧小平氏、毛沢東氏などに並ぶ指導者に格上げされました。
 彼は中国の最高権力とも言うべき軍事委員会主席を習近平に譲り、完全に引退することにしたと、報道されています。

 チャイナウオッチの得意な方の情報を見ていると、実際の状況が分かってきます。通常は中央政治局常務委員7人で権力を握ると考えるのですが、この政治局委員は25人いて、この方々の影響も強そうな感じです。
 この25人については胡錦涛氏の中共青年団が12人で最も多くなっており、しかも中央政治局常務委員7人の内の5人は5年後には引退します。5年後には中共青年団が権力を握る可能性が高くなっています。

 江沢民氏も鄧小平氏も国家主席を引退した後も、軍事委員会の主席にとどまって影響力を行使していました。
 今回胡錦涛氏にもその道が残されていたのですが、彼は江沢民氏の影響力をそぐために、自身が身をひくことで次の世代への権力委譲をスムーズに進めることにしました。

 権力闘争が自分の生き残るすべてとも言うべき国において、この言葉には隠された意図がたくさんあるのでしょう。
 少なくとも胡錦涛一派の5年後の権力掌握には道がつけられていますし、影響力を直接使わないという程度でしょう。

 日本にとっての問題は、この先尖閣に対してどのような態度に出てくるかです。9月18日のメルマガでグラフを載せて解析していますが、今回は権力の結果が出たので、その続きを見てみたいと思います。
 ただ、現状をどう評価して見るのか難しいです。

 今回の中国でのデモ騒動を動かしたのは、習近平自身であったとの情報が流れています。すると常務委員は江沢民を通じて軍部の影響力が及びます。
 現実の政治局は胡錦涛一派が押さえている感じで、軍内部にまで権力が伸びていることも指摘されています。
 結局どこまでバランスしているのかよく分からない状況でした。

 グラフを見てゆく条件を、バランスがある場合とない場合、あと、胡錦涛一派の名前である中共青年団の影響のある場合とない場合で分けてみました。
 その結果のグラフは下で見て頂くように、バランスしていなければ12月に尖閣で衝突の起きる可能性が高くなりますし、中共青年団の影響が低くても同様に衝突の起きる可能性が高くなるという結果となりました。

 さて、日本ではもうすぐ総選挙になりました。当然のごとくこの選挙に向けて様々な動きが起きています。
 どうしてこの時期選挙になったのかは、正直まだ分かりません。野田首相は一部のアメリカの人々の言いなりに等しいので、この命令が一番と言われています。

 日本の総選挙に際して、マスコミは国民の生活が第一を外すように情報操作をあからさまにしています。国会議員の数も多いのに、第三極を目立たせるようにしています。報道の中立性などあった物ではないのです。
 選挙における過去の例は、マスコミは政府同様アメリカの一部の言いなりに等しいです。党首の小沢氏の無罪が確定する動きがあり、彼らは彼の権力の回復が恐ろしいようです。

 もう一つの動きとしては、アメリカの一部の人々はロムニー候補を推していたようでした。戦争には彼が向いていたのですが、このもくろみはオバマ大統領によって阻まれました。軍産複合体の代理人とも呼ばれるヒラリー国務長官も政権を去ると言われるほどなので、何らかの変化が起きているようです。こちらは来年になれば分かることです。

 もともと石原都知事の動きから始まった尖閣の問題であり、息子を使おうとするも党首にはさせられず、自身が国政に参加して何とかしようとしています。彼も愛国を歌いながら、アメリカの一部の人の意向に従う人なのでしょう。パフォーマンスだけでなく明確な政治的メッセージをマニフェストで出せるのでしょうか。
 12月の選挙に向けて、中国が尖閣に突入し、戦争に向けた煽りを入れると、日本の国その物がその準備に向けられる恐れがあります。

 国民がこの恐れにより第三極などに投票し、軍国的な動きが加速することが問題なのだと思います。実際に中国がどのように出てくるか、これを知りたかったのですが、結局出てきにくいけど来るかも知れないという結果となりました。
 アメリカサイドの戦争に向けた動きは、少しトーンダウンしている感じですが、習近平氏はこの先どのように出てくるか、分かりません。権力基盤が弱いとなると、海外へ目を向けて戦争に走りやすくなるとは、チャイナウオッチの方も書かれている普通のことです。

 12月の尖閣衝突の可能性が、この選挙に影響しないように願っています。選挙まで1ヶ月あるので、12月に何かを仕掛けてくることは可能性が高まっていると思います。野田政権は決して戻ってこないので、海保の方々には冷静に対処して欲しいと思います。
 野田政権が鄧小平氏との密約を破って尖閣を国有化したから悪いという話が流されていて、どうしてなのかと思っていました。本当であれば、日本が悪ければ中国がその点を突いてくると思うからです。

 あとで指摘があって思い出したのですが、先に密約を破ったのは中国の方でした。国内法で尖閣を自国領土に編入しているから今の争いがあるのです。政府も情けないマスコミもこの事を声を大にしては言わないのです。日本を悪者にしたい人は本当に多いのです。
 どちらの政府にも一部に戦争を望む人々がいるようです。国の権力は様々に揺れながら使われる種類の物なのでしょう。尖閣の問題を5年先送り出来れば、平和的な元の棚上げ状態に戻せる可能性があると思います。

 中国が内部の権力闘争を国外に向けないことがもっと重要ですが、中国共産党、軍の分裂を通じた国家の連邦化などには、まだ時間がかかるのかも知れません。
 それでも、これから5年間の習近平氏の政治を失敗させる種がまかれているとすると、中国の変化は始まっていると思います。

稲生雅之
PS 現在次の本の原稿を書いています。すみませんが、その影響でこのメルマガの更新がしばらくの間不定期になります。